第39期竜王戦(主催:読売新聞社)は本戦トーナメントが進行中。7月21日(火)には準々決勝の伊藤匠二冠―増田康宏八段戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、矢倉対中住まいの対抗形から抜け出した増田八段が123手で勝利。快勝といえる内容でベスト4に駒を進めています。
令和矢倉のスタンダード
柵木幹太五段の3連勝スタート、服部慎一郎七段の快進撃などフレッシュな面子の活躍が目立つ今期の竜王戦。20代同士の一戦となった本局は、増田八段が先輩の威厳を示す快勝譜となりました。序盤は令和時代のスタンダードとなった「先手矢倉VS後手中住まい」の対抗形へと進展。積極的に横歩を取ったのがこの日の増田八段の用意とみられる趣向です。
先に仕掛けたのは後手の伊藤二冠。二枚桂の活躍で先手の角を仕留めたのは悪くない戦果かと思われましたが、サッと二枚換えを受け入れたのがこの戦型を指しこなす増田八段らしい大局観でした。▲桂桂△角の駒損にも慌てずジッと矢倉を完成させたのが落ち着いた好手で、自陣の浮き駒をなくしておけば後手から有効な攻めがないのを見越しています。
狙いすましたカウンター
戦いが夜に入ってもジリジリとしたねじり合いは続きます。しびれを切らした伊藤二冠が角を飛び出したのは自然な攻め合いですが、増田八段はこの瞬間を待っていました。狙いすまして自陣に桂を据えたのが用意の一手。玄人好みの自陣桂で、自玉に対するタタキの歩の王手を消している点も見逃せません。攻めに専念できる形となっては先手優勢が明らかに。
飛車を見捨てて後手玉への寄せを目指したのが最後の決め手となりました。22時33分、伊藤二冠が投了。終盤の入り口当たりからの指し回しで差をつけた増田八段の充実ぶりがうかがえる一局となりました。敗れた伊藤二冠は、「中盤で角を取ったあたりのわかれですでに自信がなかった」との感想を残しています。
水留啓(将棋情報局)
増田八段が今年2月に行われた棋王戦五番勝負以来となるタイトル挑戦を目指す(写真は第84期A級順位戦最終局のもの。撮影:田名後健吾)



