日本発祥のソフトテニスのカンボジアでの普及に尽力し、同国男子代表ヘッドコーチとして19日開幕のアジア競技大会に挑む日本人がいる。岐阜県出身の荻原雅斗さん(36)だ。カンボジアスポーツの歴史に新たなページを刻んだ11年間の集大成として、ゆかりの地で悲願のメダル獲得を狙う。
農村でのボランティアが転機に
荻原さんは小学4年でソフトテニスを始め、東北高(宮城県)、中京大(愛知県)で日本一を経験した。「ゼロから自分の力を試したい」と海外で働く意欲が強まり、2013年からカンボジアに移住して日本料理店の運営に関わる仕事を始めた。
転機が訪れたのは14年夏頃。日本人の友人の提案を受け、首都プノンペンから車で約3時間ほどの農村で、学校に通えない貧しい子どもたちにソフトテニスを教えるボランティアをすることになった。手作りの道具で整地し、手編みのネットでコートを作って指導を始めた。「子どもたちがスポーツを通して規律などを学ぶきっかけになれば」という思いだった。
無給でのヘッドコーチ就任
その活動が、同国初のソフトテニス連盟の設立に動いていた五輪委員会のメンバーの目に留まった。関係者の前でサーブを披露すると「お前しかいない」と、ヘッドコーチ就任を打診された。無給だったが、不思議な巡り合わせに縁を感じ、15年から指導を始めた。
当時の代表選手は硬式テニスから転向したての5人ほどだ。予算は乏しく、ボール3個で練習することもあった。それでも身体能力の高い選手たちは、瞬く間に技術を吸収し、東南アジア競技大会でメダルの常連となるなど成長した。
競技普及とアジア大会への道
日本で中高の保健体育の教員免許を持つ荻原さんは、自らソフトテニスの指導法をマニュアル化し、カンボジア政府にかけあって高校体育の授業に採用してもらうなど競技の普及に力を入れた。現在の競技人口は約300人で、国内大会も開かれるようになった。それでも、まだメジャー競技とはいえず、国の予算が付かない中、選手10人やスタッフの渡航費をクラウドファンディングなどで集めてアジア競技大会の参加にこぎ着けた。
18日に行われる男子団体予選の会場となる東山公園テニスセンター(名古屋市)は、学生時代に日本一を目指して汗を流した思い出の地だ。後任となりうるカンボジア人指導者も育ち、大会後にヘッドコーチから退くことを決めている。「自分を成長させてくれたカンボジアと日本への恩返しのため、選手と一丸で戦いたい」と意気込んでいる。



