父の教え胸にVF支える長女・咲良さん 恩返し誓う
父の教え胸にVF支える長女・咲良さん 恩返し誓う

サッカーJ2・ヴァンフォーレ甲府(VF)の下部組織で監督を務めるなどし、選手育成に尽力した小佐野一輝さん(享年38)の長女・咲良さん(23)が、VFのフロントスタッフとして、サポーター獲得などに奔走している。その原動力は「父やサッカーへの恩返し」。きょうも笑顔でチームを支えている。

スタジアムでサポーターと交流

8月29日、今季のホーム初白星がかかった北海道コンサドーレ札幌戦前、スタジアム前のブースで、咲良さんが多くのサポーターたちとなごやかにやりとりをしていた。フロントスタッフはクラブ経営や企画などを担う裏方業務が主。試合会場では、サポーターから「会員証の再発行をしたい」「ファンクラブに入会したい」など様々な要望が寄せられ多忙な様子だが、「VFを通して出会える人たちなので、話せるとうれしい」と充実した表情を見せる。

今ではサッカー漬けの毎日を過ごす咲良さんだが、幼い頃は練習や試合のために父が家を空けることも多く、「父と遊んだり、出かけたりする機会を奪うサッカーは好きじゃなかった」と苦笑いする。

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父の功績と教え子たち

父・一輝さんは、2004年にVFのアカデミーの指導者となり、その後、プリンスリーグ昇格にも貢献。整っている環境とは言えなかったアカデミーで、選手の育成基盤を作り、多くの選手を育てあげたクラブの功労者だ。現役選手でも、クラブ初出場となったアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)で活躍したMF小林岩魚選手(29)など、教え子たちが在籍しており、「小佐野魂」は今でもクラブを支えている。

咲良さんにとっても、選手に真剣に向き合う父の姿は誇らしく、「かっこいい」とも感じていたが、スキルス胃がんを患い、16年7月、帰らぬ人となった。

サッカーがくれた立ち直るきっかけ

「何でこんなに早く」。当時、中学2年生だった咲良さんにとっては、あまりに大きなショックだった。別れから長らく喪失感に打ちひしがれたが、立ち上がるきっかけをくれたのが、父が生涯をささげたサッカーだった。「姿が見えなくても、グラウンドには父がいるんじゃないか」。そう考え、進学した駿台甲府高校で、サッカー部のマネジャーとなった。

選手権での上位進出を目指し、毎日の練習に汗を流す選手たちを支えるうちに、父が感じていた充実感を、自身も感じていることに気がついた。サッカーを通じた「縁」を感じる機会も増えていき、大学でも強豪サッカー部のマネジャーを務め、その頃からVFのことも意識しはじめた。「父と同じエンブレムを背負いたい」との思いが日に日に強くなり、昨年4月にクラブの一員となった。

現在は主にファンクラブに関する業務などに携わっており、入会後に一定の年数を経過したシーズンシート会員に記念バッジを送る企画を考案するなどして好評を得ている。今後も父が愛したクラブと共に歩む覚悟で、「つらいことがあったときに前を向く原動力となれるVFであり続けたい。自分ができることをやって、少しずつ力になれたら」と意気込んでいる。

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