2008年に高橋克徳氏が『不機嫌な職場』を出版した当時、職場にはイライラやピリピリした雰囲気をまき散らす上司が確かに存在した。そうした人物が職場の空気を支配し、ギスギスした人間関係を生み出す現象が各地で見られた。しかし、それから18年が経ち、コロナ禍も経て、職場の風景は一変した。
ピリピリ上司から萎縮する上司へ
高橋氏は「あの頃の『ピリピリ上司』は、いまや絶滅危惧種と言ってもいいほど見なくなった」と指摘する。現在の管理職はピリピリするどころか、むしろ萎縮し、落ち込んでいる人の方が圧倒的に多いという。その背景には、パワハラへの過敏な反応がある。少し強く注意しようものなら「それ、パワハラですよね」と返されるのがオチで、上司より上の役員や人事部に訴えられれば、自身の評価にも響く恐れがある。イライラした態度を外に出せる時代ではなくなったのだ。
困った人との向き合い方
高橋氏は、上司や部下、ご近所、配偶者など、身の回りに一定数存在する「困った人」に振り回されない方法を提唱する。厄介なのは、彼らの不機嫌やわがままに巻き込まれ、自分の機嫌まで損なわれることだ。しかし、相手と戦う必要も、相手を変える必要もないという。相手の性格を理解すれば、不機嫌なサインに早く気づき、適切に対処できるようになる。
高橋克徳氏はジェイフィール代表、武蔵野大学経営学部特任教授。1966年生まれで、一橋大学大学院、慶應義塾大学大学院博士課程単位取得。野村総合研究所などを経て2007年にジェイフィールの設立に参画し、現在はCo-CEOを務める。人材育成・組織改革手法の開発やコンサルティングに取り組み、著書に『職場は感情で変わる』などがある。
現代の職場環境の変化
高橋氏によれば、2008年当時と比べて職場の人間関係は大きく変化した。かつては不機嫌な上司が職場の空気を悪化させていたが、今では管理職が部下の反応を恐れて萎縮する傾向が強い。この変化は、パワハラ防止法の施行や働き方改革の影響も大きい。しかし、困った人がいなくなるわけではなく、むしろその存在にどう対処するかが新たな課題となっている。
高橋氏は、職場の困った人から自由になるには、一対一で挑むのではなく、職場全体の空気を変えることが重要だと説く。個人で対抗するのではなく、周囲との関係性を調整し、良い感情の連鎖を起こすことで、結果的に困った人の影響力を弱めることができるという。



