英語で学ぶ「CLIL」導入、自修館中等教育学校の取り組みと成果
英語で学ぶCLIL導入、自修館の取り組みと成果

神奈川県伊勢原市にある自修館中等教育学校は、2023年から英語の授業に「CLIL(内容言語統合型学習)」を導入している。CLILは「英語を学ぶ」のではなく「英語で学ぶ」ことを指し、生徒が英語で考え、表現する力を養うことを目的としている。英語科主任の森友秀教諭と国際理解を担当する小野琴美教諭に、授業の目的と効果を聞いた。

多彩なテーマで英語で考える力を育成

CLILは3年(中学3年)から5年(高校2年)まで行われ、中学では週6コマ、高校では週7コマある英語の授業のうち、2コマを日本人教師によるCLIL-J、1コマをネイティブ教師によるCLIL-Eとし、合わせて3コマをCLILに充てている。導入の目的について森教諭は、「グローバルに活躍する人材が求められるこの時代において、英語は受験に特化した文法指導、知識重視の勉強だけでは足りないと考えたからです。答えのない問いに対して英語で考え、英語で表現する力を身につけてほしい」と語る。

CLIL-Jでは、教科書の長文からテーマを派生させることが多い。例えば、ピカソのゲルニカを題材にした長文を読んだ際には、ペアで感想を述べ合い、その後、ゲルニカのモチーフを想像して伝え合うなど、思考と表現を段階的に深めていく。さらに、ピカソに限らず様々な芸術を鑑賞し、4人1グループでタブレットを使いながら英語で感想を発表する。生徒が選ぶ作品は美術館の絵画からアニメ絵まで個性的だ。授業を担当した小野教諭は、「アートアプリシエーションには正解がありません。好きな芸術を選んでいいし、感想も100人いれば100通りあっていい。生徒が英語を使ってどう気持ちを表現しようとしているかを重視しています」と話す。

また、アウトプットの際には文脈を大切にしているという。「日本人なら一度は聞いたことがある『This is a pen.』。でも、海外に行ってこの英文を使うシーンはまずないでしょう。文法や単語の学習に重きを置いていると忘れがちになってしまいますが、CLILでは実際の生活で使える英語を意識しています」と小野教諭は説明する。この他にも、病気で亡くなった人の手紙を読んで幸せについて考えたり、アイヌ文化の口承文化を守るための活動から文化の本質を考えたりと、テーマは多岐にわたる。現在、5年(高校2年)では生物の恒常性(ホメオスタシス)をテーマに、人の健康に責任を持つべきは誰かを考えているという。

読解力と瞬発力の向上、模試でも成果

読解要素の強いCLIL-Jに対し、CLIL-Eは瞬発力を養うことを重視し、1年を通してグローバルカルチャー、サイエンス、テクノロジー、グローバルイシューの4テーマで授業を行う。4年(高校1年)のサイエンスでは英語の栄養成分表示を読み解き、5年(高校2年)のグローバルカルチャーでは世界の大学について調べ、進学後に挑戦したいことを英語で面談する。

両授業とも日本語を併用する。「オールイングリッシュで行うと、思考が止まってしまう可能性があるからです。大切なのは思考を止めないこと。学年が上がるにつれて、徐々に英語の割合を増やしていきますが、最初は思考と表現に慣れることを重視しています」と小野教諭は説明する。導入から3年が経ち、「生徒は英語をポジティブにアウトプットできるようになっている」という。英語に苦手意識があった生徒が海外フィールドワークで積極的にコミュニケーションをとったり、ホームステイ先で関係性を築いたりする姿に成長を感じるという。

5年生(高校2年)の相澤諒君は2025年にセブ島へ語学研修に行き、CLILの効果を実感した。「日本語を話せない現地の先生とセブ島の貧困問題やゴミの問題について2時間ほど話し合いました。自分の意見を具体的に伝える力がついていると感じました」と話す。将来、自動車の開発・研究に携わりたい相澤君は、英語の論文を読む機会も多く、「CLILでは教科書に載っている例文ではなく、実際のニュース記事などを読むことが多いので、英語の論文もまずは読んでみようと思えるようになりました」と語る。

読解力の向上は相澤君だけの効果ではない。25年度に4年生(高校1年)が受験した「Benesse進研模試」の全3回で、思考・判断の項目において生徒たちは徐々に得点力を伸ばしている。「単語力や文法は受験期に伸ばすことができますが、長文の中で流れを読み取る力は、一朝一夕で身につくものではありません。じっくりと時間を費やし学ぶことで着実に成果が出ています」と小野教諭は手応えを感じている。

英語を日常に、今後の展望

5年生(高校2年)の村瀬琉華さんは、文法を学ぶだけの学習でないところにCLILの面白さを感じている。「英語はコミュニケーションツールの一つなのだと学びました。知っている文法や単語を駆使してどう伝えようかというのも大切ですが、文法が間違ってもいいので、自分の思いを伝えることのほうが重要です」と話す。CLILで学んだ中で特に印象に残っているのは、遠隔操作ロボット「OriHime」だ。入院などで離れた場所にいても授業に参加できるこのロボットを通して、「日常に幸せを感じられるかどうかは、実際の距離ではなく、心の距離なんだと思いました。人が孤独を感じないようにするためのテクノロジーに興味が湧きました」と語る。

森教諭は「CLILを通して、日本人以外と関わることは難しくないと感じてほしい」と話し、「今後は授業内容を一層成熟させるだけでなく、ネイティブと過ごせるグローバルラウンジと連携するなど、生徒が英語をアウトプットできる環境を増やしていきたい」と抱負を語った。