札幌市が旧常盤小学校(南区)跡地に誘致していたインターナショナルスクールの開設計画が、誤情報の拡散や抗議活動を理由に断念された。シンガポールに本部を置くグローバル・インディアン・エデュケーション(GIE)が優先交渉を辞退したと、札幌市が29日、明らかにした。
計画の経緯と反対運動
GIE社は旧常盤小の校舎や敷地を活用し、2027年夏のインター校開校を目指していた。市の公募に応募し、昨年6月に優先交渉権者に決まった。同社は東京や大阪でもインター校を展開しており、札幌のインター校は初年度約50人、将来的には未就学児から高校3年生まで650人規模を想定していた。
しかし、昨年夏ごろからSNSで「インド人の移民が増える」「北海道が侵略される」などの書き込みが拡散。秋に開かれた地域説明会は反対派の大声で打ち切りとなった。市議会には建設反対の陳情が計90件提出され、9割以上が同じ文面だった。市議会は今年4月、全会一致で不採択としたが、反対の声は収まらなかった。
辞退の理由と市の対応
GIE社は今月23日付で辞退届を市に提出した。誤った情報の拡散や抗議活動が今後も続く可能性を否定できず、開設後の子供たちの安全確保も難しくなると判断した。
札幌市は昨年4月に「誰もがつながり合う共生のまちづくり条例」を施行し、共生や多様性を尊重したまちづくりを掲げる。また、経済発展に向けGXやAI、半導体産業の事業を強化しており、専門的な知識や技能を持った外国人人材やその家族のため、インター校の誘致を目指していた。
市の烝野直樹国際部長は「外形的には外国人に対して排他的なまちではないかとの印象を与えてしまった可能性は否定できないが、在住外国籍市民を対象にしたアンケート結果からも、実態としては決して排他的とは思っていない」と述べた。一方で、SNSによる発信への対応の難しさにも触れ、「個人がSNSで簡単に意見表明でき、表現の自由として、個人の意見は尊重する必要がある。『移民政策反対』などと明らかに違法やヘイトでないものに対しては、冷静に受け止めなければならない」と説明した。
今後の見通し
市は今回の件を検証した上で、誤情報や排外的な動き、住民の不安解消に対応したいとし、別のインター校の誘致にも意欲を示す。旧常盤小跡地については、次点交渉権者の社会福祉法人「藻岩この実会」(南区)と売買契約に向けた協議を進める。来年にも障害者就労支援などの施設が開設される計画だ。
学校近くの住宅街では、インター校に反対する人らによる日の丸を掲げた白昼のデモ行進もあった。大音量で「日本の国土の安定を揺るがす移民政策には反対」などと声を上げた。この地域に長く暮らす70代女性によると、これまで住民の集まりでは「反対」と言いづらい雰囲気があったが、デモを受けて「巻き込まれたくない」という住民の声が増えたという。



