大阪明星学園明星中学校・高等学校(大阪市)は、保護者や卒業生にも利用を開放する独自の図書館運営を行っている。家族ぐるみで本に親しむ環境を作り、生徒の読書習慣を育むのが狙いだ。電子版の図書館通信によるお薦め本の紹介や、多様なジャンルの企画コーナー、探究学習のサポートなど、生徒を本の世界へ誘う工夫を凝らしている。
保護者や卒業生にも開放、家族的な雰囲気を重視
同校図書館は校舎北館の3、4階にあり、約7万冊の蔵書を誇る。司書教諭が常駐し、毎月発行する図書館通信で中高生向けのお薦め本を紹介している。
運営上の最大の特色は、保護者や卒業生にも利用を開放している点だ。利用登録すれば専用ホームページで蔵書検索ができ、来館して何冊でも借りられる。司書教諭の松山知容先生は「図書館開放は本校で古くから続く取り組みです。カトリック校である本校には、学校全体が一つの家族であるという考えがあり、図書館も保護者を含めて家族的な雰囲気で迎えられる場所でありたいと思っています」と話す。
保護者の図書館利用が生徒の読書習慣につながる期待もあるという。「家庭内で大人が当たり前のように本を読む姿を見ていると、子供は自然と影響を受けるでしょう」と松山先生は語る。数年前から保護者への周知を進めた結果、現在は月に40~90冊程度の貸し出しがある。返却時に「面白かったので、子供にも薦めました」と話す保護者もいるという。
企画展示や本の福袋で、本との出会いを演出
近年はスマートフォンの普及などで生徒の読書離れが進んでおり、貸し出し冊数を伸ばす工夫が欠かせない。「まずは図書館に足を運んでもらう工夫が必要です。図書館通信で、読書になじみのない生徒にも届くように意識して本を紹介したり、担任の先生にクラスで紹介してもらうこともあります」と松山先生は話す。
館内には定期的に展示替えする企画コーナーを数か所設け、時事的なテーマなど幅広いジャンルの本を紹介している。また、12月の冬季休暇前には、司書教諭が選んだ本2冊をプレゼント風にラッピングした「福袋」を30~40セット用意し、毎年すべて貸し出されるという。
蔵書は月に平均200冊を購入し、新陳代謝を図っている。「話題の小説はもちろん、キリスト教や人権教育、探究学習に関連した本、生徒に人気の自然科学や歴史、スポーツなどの本を選んでいます。大人が読ませたい本を用意するのではなく、生徒自身に選んでほしいと思っています」と松山先生は説明する。返却日は年8回に設定し、生徒が自分のペースで読めるようにしている。
探究学習の拠点としても活用、生徒の声も
図書館3階にはグループワークや発表ができるラーニングコモンズがあり、授業の調べ学習や探究学習に活用されている。司書教諭は資料探しの相談やサポートを行い、「図書館に行けば知りたいことが分かるという成功体験が、卒業後の図書館利用にもつながる」と期待を込める。
課外活動でも、部活動やビブリオバトルなどで図書館が利用されている。文芸同好会は京都の妖怪伝説を地図にまとめる活動をしており、図書館内で「怪談会」を開催。部長の中村圭アルファロ君(高3)は「今年4月の怪談会には先生も含めて十数人が集まりました。声の抑揚や間を工夫する難しさを学び、想像力をかきたてる言葉の力を実感しました」と話す。
メンバーの奥井諒一君(高2)は「週に3、4回は図書館を訪れ、落ち着いて過ごせる居場所です。司書の先生は丁寧に対応してくれます」と語る。東谷彰悟君(高2)は「本屋と違って興味を引かれる本をすぐ読めるのが図書館の良さ。心理学に興味を持った時も、資料を読んで興味が深まりました」と話す。
松山先生は「生徒たちが中高生のうちに本や図書館に親しむために、司書教諭の責任は大きいと考えています。今後もさまざまな働きかけにより、本に親しむ生徒を増やしていきたいです」と抱負を語った。



