水戸葵陵高校書道部は書道パフォーマンス甲子園に向け、「世界に届けるパフォーマンス」をテーマに掲げた。多くの人に書の力を届けるため、クラシック音楽や手話をパフォーマンスに取り入れ、書との融合を目指している。
理由はユネスコ無形文化遺産審議
書道が今年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産への登録可否を審議されることを踏まえ、同部は世界を見据えることにした。今回の大会では、外国人も知るクラシック音楽とともに書道を披露する新たな挑戦を決めた。
選んだのはチャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」と、水戸芸術館の前館長で2024年に死去した世界的指揮者・小沢征爾さんが指揮したホルストの「木星」。古くからあるという点で共通する書道とクラシック音楽を融合させ、「新たな芸術を生み出す」決意を表現する。
手話学習で聴覚障害者に伝わるパフォーマンスを
「多くの人に伝えたい」という思いは障害者にも向いている。同部は同年からパフォーマンスに手話を取り入れた。顧問の辻哲一教諭(57)は、同年のテーマを「能登半島地震の復興」としたことに触れ、「少しでも多くの人に復興のメッセージを伝えたいと考え、手話を使う案が出た」と振り返る。
昨年まではインターネットで調べるだけだったが、今年は部員から「手話をしっかり学びたい」という声が上がった。5月には常陸太田市の手話講師で聴覚障害がある大谷由美さん(56)を招いた。
手話を本格的に教わると、わずかな動きの違いで全く異なる意味に見えてしまうことがわかった。聴覚障害者に伝わりやすくするには、表情や視線を意識することが大切だと知った。
手話の学習を提案した3年の岡本結愛さん(18)は「手話を正しく理解したいと思った。一つひとつの表現に各部員が責任を持ち、チームで心を一つにして最高の作品を作り上げたい」と語る。大谷さんは「手話を学んでくれてうれしい。聞こえない人も楽しめる」とほほえんだ。
先輩からのエール
昨年の優勝チームを率いた前部長で東京女子大1年の根本栞恩さん(18)は「一致団結することで生まれる華やかなパフォーマンスが葵陵の強み」と話す。クラシック音楽を使い、手話を学ぶ後輩たちの姿に「団結しているからこその挑戦で誇らしい。全力で世界中の人に感動と勇気を届けてきて」とエールを送る。
辻教諭は「書道がユネスコの無形文化遺産になった時、今回のパフォーマンスを世界の人に見てもらい、『書道はすばらしい』と思ってほしい。そんな作品にする」と力を込めた。



