甲南女子中学校・高等学校(神戸市)は、2027年度の中学入学生から新たなコース制度を開始する。新コース制のポイントは、柔軟なコース移動ができる「段階的3コース制」と生徒一人一人に寄り添うための「少人数化」、制度の刷新に伴って学習内容の位置付けを改める「新しい学びの3本柱」の三つだ。狙いは「自己決定できる、自律した女性」の育成にあるという。
「段階的3コース制」で進級時にコース移動が可能
新たに導入される「段階的3コース制」は、これまで19年間採用してきた「スタンダードコース」と「Sアドバンストコース」の2コース制に代わるものだ。その特徴は、コースの移動を柔軟にした点にある。入試広報室主任の松原稔幸教諭は「きめ細かで質の高い教育を実現するためには、コースを固定化するのではなく、生徒一人一人の特性をしっかり理解し、入学後の学力の伸びに合った速さで授業を受けてもらうことが、より効果的であろうと考えました」と語る。
中学入学時は、成績に応じて「プライムコース」「エクセレンスコース」の2コースに分かれる。「プライムコース」は基礎をしっかりと学び、「エクセレンスコース」は発展的な内容を学ぶ。中2以降、「私立文系/理系」を目指す「プライムコース」、「国公立文系/理系」を目指す「エクセレンスαコース」、「難関国公立大学/国公立医学部医学科」を目指す「エクセレンスβコース」の3コースとなり、さらに高2以降、「プライムコース」と「エクセレンスαコース」は「私立文系」「私立理系」「国公立文系」「国公立理系」に分化する。
少人数化で手厚い教育を実現
中2以降は高3まで、各学年の進級時に生徒本人の希望と成績に応じてコースの移動ができる。進度の速いコースに移りたい生徒に対しては、丁寧に面談を行い、学習進度に差がある場合、長期休暇中に特別講習を行うなどの手厚いサポート体制が取られる。成績上位の生徒でも、自分の学習特性とペースに合わせ、進度が緩やかなクラスにとどまることもできる。
なお、「プライムコース」から「エクセレンスα」または「エクセレンスβ」への移動は、中2進級時に成績上位3分の1以上に入っていることが目安となる。入試ではたまたま実力が発揮できず、「プライムコース」に所属することになった生徒も、ポテンシャルを生かして学力を伸ばせば移動が可能だ。
「エクセレンスβ」コースは、主に医学部進学を考える生徒を想定しているが、あえて文系志望者も対象にしているという。その狙いについて米田明美校長は、「中学2年時点で、興味や関心を決めつけるのではなく、その後5年間、さまざまな分野のことを学び、自分の興味のある分野や進学先を見極めた上で、本格的に受験対策に取り組んでほしいからです」と説明する。
新コース制導入に合わせて「少人数化」も図られる。従来の1学年5クラス180人体制から、5クラス150人体制とする。また、より綿密なサポート体制が取れるように教員数は増やす予定だという。松原教諭は「本校は、百年前の創立以来、少人数制を伝統とし、生徒一人一人の個性に寄り添った質の高い教育を行ってきました。少人数化と教員の増員を行うのは、より手厚い教育を実現することが目的です」と説明する。
1クラスの人数が約30人となるため、授業での質問対応、英会話の発話機会の増加、さらに生活サポートの充実や、悩みに丁寧に寄り添うことなども可能になる。また、成績の伸びた生徒が授業進度の速いコースへ移動を希望した際も、人数にゆとりを持たせているため受け入れやすいという。
「新しい学びの3本柱」で探求学習と国際教育を刷新
新コース制に合わせて学習内容の刷新も図られる。それが「新しい学びの3本柱」だ。以前から行っていた「探求学習」や「国際教育」などを、時代に合わせて「リベラルアーツ」「サイエンス」「グローバル」という三つの視点から位置付けし直す。なお、同校は「探究」でなく、「探求」の字を使う。「本校では他校に先駆けて20年ほど前から、現在の探究学習といわれる探求学習の取り組みを行ってまいりました」と米田校長はいわれを語る。
その「探求学習」について松原教諭は、「『T』の字のように、中学3年間はTの字の横棒を広げる時期、高校3年間は縦棒を深める時期と捉えた教育を行います」と言う。
中学期は「リベラルアーツ」の視点から、多様な校外学習などを通して体験の幅を広げ、学びの土台をつくり、コミュニケーション力を育成する。高校期は「サイエンス」の視点から知識や体験に深みを増す時期で、課題を見つけて仮説を立て、検証結果をレポートにまとめるといった研究方法論を学ぶ。系列の甲南女子大の協力を得て開く「高大連携講座」で、大学教員の授業を受講する機会なども用意されている。
「国際教育」は「グローバル」の視点から、中1から高1までの4年間、ネイティブの教師による英会話授業を実施し、リスニング力とスピーチ力を培う。授業は1クラスを2分割した15人程度で行うため、今より発話機会が多くなるという。また、中3から高2まで、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、イギリスへの中長期留学制度が用意され、留学時期や期間、留学先は生徒のレベル、タイミングに合わせて選べる。
また、新コースの導入に伴い、実用英語技能検定の取得目標を、中学卒業時点で「プライムは準2級、エクセレンスαは準2級プラス、βは2級」と設定した。松原教諭によると、現行のSアドバンスト生の大学合格実績や授業レベルなど過去のデータに基づいて設定したといい、昨年度始めた放課後の学習支援授業や、外部の専門講師による英検対策講座などの学習サポートによって、無理なく目標達成できる見込みだ。
「新コースでは、自分で考え、自分で選ぶことが大事になります。進学先やその先の将来を決める時も、自分の特性を考えながら自己決定できる、そういう自律した女性に育っていってほしいと思います」と、米田校長は新コース導入への期待を語った。