カリタス女子、数学で少人数制とICT活用 意欲引き出す授業
カリタス女子、数学で少人数制とICT活用 意欲引き出す

カリタス女子中学高等学校(川崎市)は、中学の数学授業で1クラス約20人の少人数制を導入している。1学年10授業クラスのうち3クラスは「マスタークラス」として意欲的な生徒向けに高度な内容も扱うほか、ICTを活用した授業で生徒の学力データを収集し、個々の課題点を明確にして学力向上に役立てている。

少人数制の導入と「マスタークラス」の設置

同校が数学の授業に少人数制を取り入れたのは2006年度。教科ごとの専用教室に移動して学ぶ「教科センター方式」校舎の完成に合わせた導入だった。数学科主任の鷹本大志教諭は、「本校は医療系への進学志望者が多く、受験の上で重要なので、数学には以前から力を入れています。もちろん、数学で受験しない生徒もいますが、皆が興味を持って学べるよう、きめ細かい対応をしたいと考えて取り入れました」と説明する。

中学の3年間は、1学級の半数である約20人で数学の授業クラスを編成。当初は個別対応などに配慮するための少人数制だったが、20年度からは習熟度に注目し、学力上位者や意欲的な生徒の学習環境を整えるため、1学年10授業クラスのうち3クラスを「マスタークラス」に設定している。授業進度は残りの「スタンダードクラス」と同様だが、大学入試に通じる深い知識や応用問題に取り組む内容を取り入れている。

「マスタークラス」への編入は希望制で、中1では7月に募集して9月からスタート。中2・中3では前年度末と定期テストごとに募集する。編入の基準について鷹本教諭は「現時点での成績より、意欲を重視する方針です」と語る。「課題提出などをきちんとやるという約束事をした上で、『じゃあ頑張りなさい』と背中を押します」

ICTを活用した授業とデータの活用

高校でも数学の少人数制は継続され、高1では文系2クラスを三つの授業クラス、理系3クラスを四つの授業クラスに組み換えて授業を行う。さらに高2・高3では、志望大学系統ごとに習熟度別で二つの授業クラスを設けている。

現在、中2の数学を担当する青木友香教諭は、授業の目標を「着実な計算力を付けるとともに、図形や関数などの基本を固めること」と話す。そのために、生徒の注意を引き付けるさまざまな工夫を凝らす。「中1では折り紙やパズルといったゲームを教材に取り入れるなど、早くから数学の面白みを感じられるよう工夫しています」。問題を解かせる際にはタイムトライアルも行う。「『前回は7分でやったから、今日は6分でどう』など、向上心に働きかける声かけをします。生徒たちは競争を意識するというより、『以前の自分を超えたい』という気持ちが強く、時間を計るとすごい集中力を見せます」

生徒たちは1人1台iPadを所有し、授業ではICTがフル活用される。電子教科書だけでなく、授業支援アプリ「ロイロノート」などいくつかの学習アプリを使い、電子黒板上で立体図形を回転して見せたり、グラフ上の点を動かしたりして、概念を直観的に理解できるよう工夫している。

毎週末、その週に取り組んだ内容に対応する「課題」を出し、月曜日に提出させる。提出できなかった生徒は翌日の補習で課題に取り組むルールだ。単元を一つ終えるごとに「単元テスト」を実施し、成績不振者には追試を行うなど、「取りこぼさないこと」に力を入れている。定期テストの後は、問題ごとの「正答率」をクラウドで共有する。「クラス全体では正答率が高いが、自分は間違えていた問題が明確になるなど、生徒が自分の力を把握して復習する助けになっています」

生徒の声と今後の展望

各テストの結果や、授業中にクラウドでやりとりした生徒の解答は、理解度や課題点を把握するデータとなる。「授業でみんなに問いかけたとき、おとなしい生徒は『口パク』で正解を言ったり、『分からない』と言えなかったりしますが、データを基に間違えやすい部分を見極め、解説を行います。『夏休みの勉強は何をやったらいいですか』など、学習計画の相談にくる生徒も多く、その際もデータが役立ちます」

青木教諭が現在担当する「マスタークラス」の中2生に話を聞いた。鈴木実紘さんは「数学ができるとカッコいい」と感じ、「マスタークラス」を希望した。授業は「それぞれが自分のペースで静かに取り組んでいる雰囲気」だという。応用問題に取り組む時間が多く、宿題もたくさん出るが、「いつでも質問に行ける環境があるので、助けになっています」と言う。「最初は問題文を読むのが苦手でしたが、たくさんの問題を解くうちに問いのパターンが分かるようになり、『この種の問題文はこう対応する』という理解が自分の中に刻み込まれてきて、解くのが楽しくなってきました」

惣谷柚香さんは、計算はあまり得意でないが、図形や表の分野が好きで、「もっと色々知りたい」という気持ちから「マスタークラス」に入った。小学生の時に「つるかめ算」として習ったことを中学では方程式で解くことなどを知り、思考の視点や手法が変わることに面白みを感じているという。「先生への質問は、最初は勇気が要りましたが、『分からないところをそのままにしたら後で困る』と思って、中2から積極的に行くことにしました。疑問点も丁寧に説明してもらえるのでよく分かり、以前より数学が好きになりました」

同校では、高1で文系・理系に分かれる。かつては文理の比率が3:2程度だったが、数学の授業に少人数制を採用してからは徐々に理系選択者が増え、今年度は約2:3と逆転した。青木教諭によると、数学に対する生徒の積極性の高まりは、普段の様子からも感じられるという。「テストの振り返り文で、入学当初は漠然と『これからも頑張ります』と書いていた生徒が、学年が上がるに連れて『自分はここが苦手なので、こう取り組みたい』と具体的に書くようになります」

同校は、今後も少人数のきめ細かな指導を続けながら、「マスタークラス」への希望者を増やしていきたい考えだ。そのため、今年度から編入のシステムを一部変更した。従来は「マスタークラス」に入ると年度末まで「スタンダードクラス」に戻れなかったが、年度内に1度だけ戻れる仕組みに変えた。「『マスター』でやれる実力があっても、今一つ自信が持てなくて二の足を踏む生徒が多くいます。そこで、まずはお試しで『マスター』を体験し、自信につなげてもらいたいと思っています。今のところ、『スタンダード』に戻りたいと言う声は出ていません」

「数学は、人間がどう思考すべきかを学ぶ学問です。新しい知識や思考法との出合い、問題への取り組みを『面白い』と感じる心を育てていきたい。最初は苦手意識があっても、好きになれる伸びしろはたくさんあります。そこを教員が丁寧に拾い上げ、きめ細かい対応で導いていきたい」と鷹本教諭は抱負を語った。