新聞協会賞受賞作に三宅香帆さんらがコメント 「当事者の声を拾い上げた」
新聞協会賞受賞作に三宅香帆さんらがコメント

日本新聞協会は新聞週間に合わせ、2026年度の新聞協会賞受賞作品について各界の有識者からコメントを発表した。全体には文芸評論家の三宅香帆さん、ニュース作品にはスマートニュースメディア研究所の山脇岳志所長、企画作品には東大の林香里教授、写真・映像作品にはメディアアーティストの落合陽一さんがそれぞれの視点から応じた。

ニュース作品は福岡県政の不適切慣行を追及

ニュース作品に選ばれた西日本新聞社の「歪(ゆが)んだ関係―福岡県政を追う」は、福岡県議会の高額な海外視察や正副議長ポストをめぐる現金授受疑惑など、常態化していた不適切な慣行を暴き、地方政治を監視した。山脇所長は「権力監視というジャーナリズムの役割を端的に示した報道である」と評価した。

山脇所長は、記者が感情に任せず事実を積み上げて冷静に報じた点に注目。「報道が明らかにした一つ一つの波は重なって、うねりとなった。福岡から全国に広がり、改革の動きを促している」と述べた。さらに、米国で新聞がなくなった「ニュース砂漠」地域では贈収賄などの汚職が増加したとの調査研究を挙げ、「健全なジャーナリズムは民主主義を支える力となる」と指摘した。

企画作品は兵庫県知事選と強制不妊政策を検証

企画作品には、社会課題を粘り強い取材で掘り下げた2件が選ばれた。神戸新聞社の「あの熱狂の中で」は、2024年の兵庫県知事選をめぐる熱狂や分断、メディア不信を追い、SNS時代の民主主義や報道の在り方を問いかけた。林教授は「何が正解か分からない状況で記者が現場に飛び込み、社会の一員として市民の姿を伝えたことが良い」と話した。

京都新聞社の「隠れた刃」は、7年3カ月に及ぶ情報公開請求と訴訟で開示させた資料から強制不妊政策の実相を明らかにし、障害者を取り巻く現代の課題も問い直した。林教授は「7年をかけて勝ち得た一次資料を基に取材し、権力の不条理を暴いた。訴訟で解明の道が開き、研究者にもありがたい」とコメントした。

写真・映像作品は3件が社会と自然の実相に迫る

写真・映像作品は、共同通信社の「終わらぬ悲しみの連鎖」、山陽新聞社の「島を渡る」、NHKの「ヒグマ 異変の海に生きる」の3件が選ばれた。落合さんは「3作品にはじっくりと考えさせられる深さがある」とし、プロによる撮影とキュレーションの質の高さに言及。「バズることが目的化し情報がますますファストになる中で、ジャーナリズムの意味は時間をかけて文化を温めていくスローさにこそある」と述べた。

三宅さんは受賞作全体について「いずれも『当事者』の切実な声を丹念に拾い上げていた」と評価。SNSやAIの時代に「これは事実だ」「これは事実ではない」と冷静に示せるのは報道機関だけだとし、「現代社会を生きる一人ひとりを〝冷やす〟役割も期待している」と述べた。