オーストラリア・メルボルンの大手新聞社で記者をしていた女性(49)が、業務によって心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したとして新聞社を訴え、勝訴した。事件事故や災害を取材する記者たち自身が負うトラウマ(心の傷)の存在が近年、知られるようになり、リスクを減らすための取り組みが進められている。
橋から落とされた女児の取材
女性は2009年のある朝、取材に向かうよう会社から電話を受けた。4歳の女児が、橋の上から父親に投げ落とされたという事件だった。下の川までは58メートルあった。
現場に着くと、女児が水の中から引き揚げられている最中だった。救急隊員らが心肺蘇生をしていたが、「どうしようもない」という様子で手で顔を覆っていた。女児は搬送先の病院で亡くなった。父親は3人の子どもをめぐって元妻と親権争いをしており、後の裁判で元妻を深く傷つけるため女児を投げ落としたと指摘された。
「自動操縦モードになっていた」
それまでの6年半、事件事故の取材を続けていたという女性。PTSDになったのは業務によるものだとし、会社の責任を訴えて勝訴した。
惨事に遭遇しトラウマを抱えた当事者に、どう取材するかも課題だ。取材相手を傷つけず、記者自身も傷つかないためには、何が必要なのか。秋の新聞週間(10月15~21日)に考える連載の1回目(全3回)として、この問題を取り上げる。