「しつけだから当然」と自分の接し方を省みない親は、子どもとの関係を悪化させがちだ。教育デザインラボ代表理事で教育専門家の石田勝紀氏は、38年間の現場経験から「子どもの態度は、ほぼ例外なく親の接し方の『結果』である」と述べる。子どもが心を閉ざすのは、子ども自身に問題があるのではなく、心を閉ざさざるを得ない環境があるからだという。
「牧師」モードの親が子どもを追い詰める
「いいから言うことを聞け」「しつけだから当然だ」という言葉は、自分の正しさを疑わない「牧師」モードの思考パターンだ。このような親は、子どもが反抗すれば「反抗期」、口をきかなくなれば「思春期」と片づけ、原因をすべて子どもに帰属させる。しかし、石田氏は「怒ること自体は悪ではない。問題は怒ることしかしない、怒り方を振り返らない、自分のやり方を疑わない姿勢にある」と指摘する。これは心理学者アダム・グラントが警鐘を鳴らす「学び直すことの拒否」にほかならない。
子育てにこそ「科学者」の姿勢を
子育ては高度な営みでありながら、準備や学びなしに始まる。石田氏は「本来は子育てほど『学び続ける姿勢』が問われるはずだが、現実には無自覚な踏襲が多い」と述べる。人は自分が経験したモデルしか持ち合わせていないため、致し方ない面もあるが、「自分のやり方は本当にこれでよいのか」と問い直す「科学者」の姿勢が不可欠だ。グラントは、科学者型の思考で最も重要なのは「考えを変えることを弱さではなく進歩と捉えること」だと述べている。
「昨日の声かけではうまくいかなかったから、今日は別のアプローチを試してみよう」と考えられる親のもとでは、子どもとの関係が決定的に壊れることはない。子どもは「親が自分のために変わろうとしてくれている」という事実を敏感に感じ取るからだ。
凝り固まった夫を「科学者」に変える2つの方法
石田氏は、凝り固まった夫を「科学者」に変える方法として、2つのアプローチを提案している。第一に、夫の子育て方法を批判するのではなく、具体的な成功体験を共有すること。例えば「今日、子どもにこう話しかけたら、すごく喜んだよ」と伝える。第二に、夫自身が子育ての難しさを実感できる機会を作ること。例えば、週末に子どもと二人きりで過ごす時間を設け、試行錯誤する経験を積ませる。これにより、夫は自らのやり方を見直すきっかけを得られるという。
子育ては、親自身が成長する機会でもある。石田氏は「親が科学者のように仮説を立て、検証を繰り返すことで、子どもとの関係は必ず改善する」と強調している。



