公認心理師の柳川由美子氏は、著書『がんばり過ぎる親の心を休ませる子育ての不安と孤独をほぐす心理学』(実務教育出版)の中で、子どもの感情の荒波に直面した親が取るべき具体策を解説している。特に、わずか1分30秒で子どものイヤイヤが収まるという「90秒マントラ」と呼ばれる方法が注目を集めている。
感情は自然現象として捉える
柳川氏によれば、子どもが学校での出来事で泣きじゃくったり、怒りや悲しみに包まれたりした時、親は「早く泣き止ませなきゃ」と焦りがちだ。しかし、感情は押さえ込んだり、理由を問いただしたりするものではなく、波や雲のように自然に通り過ぎていくものであるという。「どんなに激しい感情も、ずっとは続かない。感情は寄せては返す波のように必ず引いていく」と柳川氏は述べる。
「90秒マントラ」の実践法
柳川氏が提唱する「90秒マントラ」は、まず怒りがこみ上げた瞬間に深呼吸をしながら「私は落ち着ける」と心の中で唱え、最初の6秒をやり過ごすことから始まる。その後、続く90秒間は感情を鎮めるための優しい言葉を自分に繰り返す。例えば「私はベストを尽くしている」「怒りも私の一部だけど、それがすべてじゃない」「この状況だったら怒りたくもなるよね。わかるよ」など、自分がホッとする言葉を選ぶと良い。
感情の波に飲まれないための具体策
大波が来た時には、まず「胸がザワザワしている」「涙が出てきた」と心の中で実況中継することで、感情と自分の間に距離を作る。そして「不安が来ているな」とただ観察する。さらに、波に飲まれそうな時は、呼吸のリズムや手のぬくもり、足裏の安定感など五感に注意を戻すことで、思考の嵐から抜け出し「今、ここ」に帰ることができる。
感情を雲に例える心理モデル
柳川氏は感情を「雲」、心の奥底を「青空」に例える。激しい感情は一時的な雲に過ぎず、その奥には常に穏やかな青空が広がっている。子どもが感情の雲に覆われている時、親はその雲を否定したり払いのけようとしたりせず、ただ「雲が出ているね」と寄り添うことで、子どもは安心して感情を手放すことができる。
親の心の静けさが子どもを落ち着かせる
柳川氏は「親の心が静まると、子どもも安心できる」と強調する。親自身が感情の波に飲まれず、穏やかな青空を保つことで、子どもは安全な場所を感じ取り、自然と感情が落ち着いていく。そのために、親自身が五感ワーク(例えば、足裏の感覚に意識を向ける、深呼吸をする)を行い、自分の心を青空に戻す習慣が重要だ。
まとめ
子どもの感情の嵐に直面した時、親は「どうして?」と問い詰めるのではなく、感情を波や雲として受け入れ、90秒間のマントラで自分自身を落ち着けることが効果的である。この方法は、子どもの感情を無理に否定せず、自然に収まるのを待つという、新しい子育ての視点を提供している。



