18歳が国政選挙で投票できるようになった2016年の参院選から7月で10年。高校の「主権者教育」で、実際の政治・政策について生徒が議論する学習をしている高校は3割に満たないことが文部科学省の調査で分かった。背景には教育基本法が定める「政治的中立性」があり、文科省が5月、教育基本法違反を初認定したことで実践的な授業が一層しにくくなるとの懸念も出ている。
実施は94.9%だが、議論は低調
文科省が16年度から3年ごとに行う主権者教育の実施状況調査によると、22年度は対象の国・公・私立高のうち、回答した1306校の94.9%が、いずれかの学年で主権者教育を実施していた。
一方、25年度の調査によると、回答した1823校のうち、現実の政治・政策について議論したのは高1で19.2%、高2で24.6%、高3で27.6%。16年度調査では高1が27.5%(16年度予定)、高2が27.2%(同)、高3以上(15年度実績、定時制4年生などを含む)が20.9%。対象や選択肢が異なり単純比較できないが、大きく伸びてはいなかった。
25年度の調査では、公職選挙法や選挙の仕組みを教えた学校が55.8%(高3)で最も多く、「選挙教育」が主となっている実態が浮かぶ。
政治的中立性への配慮が壁に
「教育の憲法」と言われる教育基本法は、学校に「政治的中立性」を求めている。議論や活動といった実践的な教育が広がらない背景には、この政治的中立性への配慮があるとの指摘は根強い。主権者教育を推進する日本若者協議会(東京都)の室橋祐貴代表理事は「学校には中立性を過度に気にする風潮がある」と話す。15年に安全保障法制を題材にした山口県立高校の授業に対し、県議会で議員から「政治的中立性に欠ける」との指摘があったことを挙げ、「クレームを避けるため、政治的な事象を扱わないことが安全だと考えるケースも少なくない」という。
文科省は15年に作成し、高校生に配布している副教材に沿った授業を勧めるが、同協議会の調査では「分量が多すぎる」などとしてあまり活用されていなかった。
文科省は同志社国際高校(京都府)の沖縄県名護市辺野古への研修旅行について、教育基本法違反を初認定した。教員や専門家から「主権者教育を避ける空気がさらに強まるのではないか」との懸念の声も上がる。室橋さんは「どのように教えれば中立性違反に当たらないのか、文科省はより具体的に示し、教員が取り組みやすくする必要がある」と指摘する。
コメント:若者の意識と教育の課題
能條桃子(NOYOUTHNOJAPAN代表)は「わたしの行動で国や社会を変えられると思う」と答えた人の割合が、22年の26.9%から26年は52.7%に倍増したことは喜ばしい変化だとしつつ、「残念ながらまだまだ若者の意見を聞く『参画』までしか取り組みが進んでいないことも多くある」と述べている。
常見陽平(千葉商科大学教授・働き方評論家)は「選挙制度の説明だけでは、主権者は育たない。現実の政策を知り、異なる意見をぶつけ、自分の言葉で考え、語る機会が必要である。そもそも政治的中立性とは、政治を語らないことではない。右と左の意見を機械的に並べれば中立になるわけではない」と指摘している。



