ChatGPTのMac向け新機能に「データ漏えい」のリスク? セキュリティベンダーが指摘
ChatGPT Mac新機能にデータ漏えいリスク? セキュリティベンダー指摘
OpenAIは2026年8月中旬、生成AIツール「ChatGPT」のmacOS向けアプリに新機能「Computer History」を追加した。ユーザーがPCで実行した操作を記録し、AIが作業の文脈を把握できるようにする機能だ。「先週、配送についてやりとりしていた相手にリマインダーを送って」といった曖昧な依頼にも応えられるようになる。Computer Historyは画面のスクリーンショットを使わない。macOSのアクセシビリティ機能(画面上の情報を支援技術に提供するOSの仕組み)を通じて、クリックや文字入力、アプリの切り替えといった操作を記録する。標準では無効で、利用者自身が設定画面から有効化する必要がある。法人プランでは、管理者が組織として許可した上で従業員が個別に有効化する2段階の手順を採る。

「PCの日記」は誰が読めるのか

セキュリティ企業のKasperskyは2026年9月10日(現地時間)、公式ブログでComputer Historyの仕組みと危険性を検証した。同社はこの機能が生成する記録を、PCが付ける「日記」に例える。問題は、その日記の保存のされ方にある。Kasperskyが最も問題視するのは、操作記録の要約が暗号化されない平文のテキストファイルとしてMac内に保存され、同じユーザー権限で動作するどのアプリからも読み取れる点だ。

平文保存と情報窃取マルウェアのリスク

Computer Historyが収集した操作データは、最大48時間ChatGPTアプリの管理領域に保管される。この間、アプリはバックグラウンドでAIに要約を作成させ、日記のようなテキストファイルとして保存する。要約が完成すると元の操作データは削除される。Kasperskyによると、デジタルフォレンジックの研究者によるテストでは、2時間の通常利用で約3500件の操作イベントが記録された。OpenAIは、要約作成に使うバックグラウンドの処理内容を保持せず、法的な要求がある場合を除いてAIの学習にも使わないと説明している。一方、会話に取り込まれた要約は通常のチャットと同じ規則でOpenAIのサーバに保存され、ユーザーの既存のプライバシー設定が適用される。記録の対象は、ウィンドウのタイトルや画面上のテキスト、入力中の文字、クリックした画面要素の名前などだ。動画や画像そのものは見えず、音声は記録されない。ドット表示で隠されたパスワード欄は読み取られず、ブラウザのプライベートモードも対象外となる。Microsoftの類似機能「Recall」がスクリーンショット方式で批判を集めたのに対し、OpenAIは操作イベントの記録という方式を選んだ。それでもKasperskyは、次のようなリスクを挙げている。パスワードや暗号化で守られているはずのメールやチャットの内容の漏えいが、平文ファイルとして存在する通信相手はこの漏えいの存在を知らない。相手が消えるメッセージ機能を使っていても、その配慮は機能しない情報窃取型マルウェア(インフォスティーラー)の標的になる。Mac向けのインフォスティーラーは過去2年で急増しており、AIが要約済みのファイルは標的型フィッシングの材料になり得ると同社は指摘するPCに触れられる同僚や家族であれば、仕事や生活の記録をものの数分で読み取れる

Kasperskyが推奨する設定

Kasperskyは、医師や弁護士など守秘義務を負う職種や、個人データや医療データを扱う場合には、Computer Historyの利用制限または無効化を推奨している。その上で、利用する場合の安全策として次の3点を挙げた。Macのログイン強化:自動ログインを無効にし、スリープ復帰時のパスワード要求とディスク暗号化「FileVault」を有効にする除外リストの設定:機密な会話に使うメッセージアプリや金融系のアプリ、サイトを追跡対象から手動で除外する定期的な確認:週に2回程度は設定画面で追跡対象のアプリやサイトを見直し、除外し忘れた情報源を取り除くOpenAI自身も公式ドキュメントで、Computer Historyのファイルには機密な情報が含まれ得るとし、Macアカウントの保護と、記録に含めたくない情報源の除外を利用者に求めている。