武南中学校・武南高等学校(埼玉県蕨市)で今年4月、利根川典子氏が新校長に就任した。安心・安全で温かな学校づくりを大切にし、学力向上だけでなく、「グローバル教育」「探究学習」「STEM教育」「リベラルアーツ」の四つを柱とした教育を深めていくという。利根川校長に教育方針や取り組みを聞いた。
「知・仁・勇」を備えた品格あるリーダーへ
利根川校長は早稲田大学を卒業後、英語科教諭として埼玉県立高校など8校で英語や国際理解を担当し、教頭や校長も歴任。県立特別支援学校や福祉高校での教育、総合教育センターでの教育相談などにも携わった。2023年度に高校の教頭として武南に着任し、今年度から中高の校長を務める。
校長として大切にしていることについて、利根川校長は「中学生は多感な時期なので、安心・安全で思いやりにあふれる温かな環境の中、人としての優しさや知性、教養を身につけられる学校づくり」と語る。1学級25~30人の少人数で、職員室は壁のないオープンな空間。生徒と教員がお互いに声をかけやすく、生徒の小さな変化に気づける環境を大切にしながら、「生徒が安心して自ら行動できる学校をつくっていきたい」と話す。
生徒に育ってほしい姿として、建学の精神「自主・自立・自学・協同」と教育ミッション「世界に通用する確固たる人間性と知性の育成」を挙げ、「自ら考えて行動し、高い志をもって目標を達成すること」「自ら計画して意欲的に学び、高い学力と広い知識、教養を身につけること」「誰とでも良好な人間関係を築き、心と力を合わせてさまざまな問題を解決し、目標達成に努めること」を行動の指針とする。
さらに、孔子の「知・仁・勇」を大切にし、「正しい判断をする力、深く学び続ける姿勢」「相手の立場に立って行動する思いやりや優しさ」「自分の信念を貫き行動する強さ、チャレンジ精神」を培い、「志高く、知・仁・勇を備えた品格あるリーダー」を育てていく。朝礼などでは「笑顔は誰にでも似合う最高のおしゃれ」と話し、笑顔であいさつすることや思いやりの心を行動で示す大切さを伝えている。来校者から「生徒のみなさんが気持ちよくあいさつをしてくれました」と言われ、生徒からも「一日一回、優しい行動をとりたくなりました」との声が上がるなど、思いが伝わっていると感じているという。
四つの柱をさらに深める取り組み
教育の柱は「グローバル人材の育成」「探究的な学びの獲得」「B(武南)-STEM教育」「リベラルアーツ」の四つ。グローバル教育では中学2年でアジア研修、高校1年でアメリカまたはカナダ研修を実施。英語の授業はALT2人と日本人教員1人がオールイングリッシュで進め、自分の意思を伝えられる英語力を育てる。昨年度は中2生と高2生のペアが模擬国連に出場し、政策提案文書(ポジションペーパー)が評価され、賞を獲得した。
探究学習では、理科、社会、国語の授業でフィールドワークを行い、事前学習、体験、事後学習、発表の一連の流れを通して、自ら問いを立て、本物に触れ、自分の言葉で考えを伝える経験を重ねる。STEM教育では、埼玉大学STEM教育研究センターの指導のもと、プログラミング教育や教科横断型の授業を展開し、問題解決力や論理的思考力を育成。リベラルアーツでは、歌舞伎やオペラなど古典芸能に触れるほか、美術館訪問後におすすめの作品を画商になりきってプレゼンテーションする「美術フィールドワーク」を行っている。
今後の展望として、グローバル教育では来年度から高校でイギリス研修を取り入れる予定。海外に姉妹校をつくって交換留学を行うなど、恒常的な交流を進めたいという。利根川校長自身、英語科教員になった当初は流暢に英語が話せず、家族とともに半年ほどイギリスに留学した経験から「自分の考えを相手に伝える重要性を実感し、価値観が180度変わった」と語り、生徒にも海外研修で価値観が変わる体験をしてほしいと考えている。
探究学習では、プレゼンテーションの大会や各種コンテストに挑戦できる場をつくるほか、海外での探究学習も計画。高校受験のない一貫校の強みを生かし、高校1~2年で自分の興味を深める論文作成も取り入れたいとしており、論文作成が進路選択や総合型選抜に生かせるとしている。STEM教育は、来年度から中学だけでなく高校の特進コースにも導入し、将来的には一貫コースにも広げる予定。データを読み解く力が重要になっていることから、数学と情報の教科横断型の授業などデータサイエンスにも力を入れていく。
学力向上と教員の挑戦
学力向上については、7限授業や土曜授業、長期休暇中の講習を行い、公立校の1.5~2.5倍の学習時間を確保。定期考査で一定の水準を満たしていない生徒には補習と再テストを実施するなど、きめ細やかな指導で学力を伸ばし、国公立大学など第一志望への合格をかなえていく。
常に進化し続ける学校であるため、今年度、約30人の教員が有志で「BU NAN未来創造委員会」を発足。教員には「生徒の成長につながるものであれば、どんなことでも挑戦してほしい」と伝えており、ある教員は「アントレプレナーシップ」の研究を進めるなど、さまざまな企画に挑戦している。「教員が夢中になっているものには、生徒も興味をもってくれますし、『挑戦したい』という思いは、生徒にも還元されるはずです」と話す。
入学してほしい生徒について、「さまざまな挑戦の機会を用意しています。チャレンジ精神のあるお子さんや、『やりたいことを見つけたい』というお子さんに入学していただき、何か一つ、心に響くものに出会ってもらえたら、私たちもうれしいですね」と語った。