南海フェリーは、2028年3月末をもって事業から撤退することを発表した。この航路は、関西と四国を結ぶ重要な鉄道連絡船として長年にわたり親しまれてきた。鉄道とフェリーを組み合わせた便利な移動手段として多くの利用者に支持されてきたが、採算性の悪化が背景にあるとみられる。
鉄道連絡船の衰退が続く
かつて日本各地には、鉄道と連携した連絡船が多数存在したが、需要の減少や維持コストの増大により、次々と姿を消している。今回の南海フェリーの撤退もその流れの一つであり、公共交通の維持の難しさを改めて浮き彫りにしている。
交通ライターの谷川一巳氏は、海外の事例と比較しながら、日本の公共交通の現状に警鐘を鳴らす。「筆者はときどき海外で公共交通利用の旅をするが、どこへ行っても公営交通がしっかりしていて、日本ほど公共交通が民間任せではない。公共交通は国の基本的なインフラとして国や州が管理し、日本のように採算性重視ではない。公共交通が欲しければ『地元でどうぞ』と、国は関与しないという国は珍しい」と指摘する。
採算性と国民の利便性のジレンマ
日本では多くの公共交通が民間企業によって運営されており、採算性が重視される傾向にある。谷川氏は「日本は民間が多いので『採算性が第一』が当たり前で、『100円稼ぐのに3000円必要』といっては、廃止が当たり前に思われているが、海外では国や州の指針がはっきりしていて『国民の利便性が第一』が当たり前である」と述べる。
かつて日本は、海外に比べて公共交通がしっかりしている国と評価されていた。しかし、現在では地方を中心に車社会が進み、公共交通の維持が困難になっている。一方で、アメリカやオーストラリアなど、かつて公共交通が発達していなかった国々では、環境意識の高まりから州政府などが公共交通を一括運営する事例が増えている。
長期的な視点での交通政策が必要
民間企業が採算性を重視するのは当然だが、谷川氏は「その採算性も5年くらいのスパンでの話であろう。イラン情勢などを考えると、10年、20年先は状況が一変することも考えられる。廃止にした公共交通の復活はまず無理なので、長いスパンで人や物の移動をどうするか真剣に考えたほうがいい」と警鐘を鳴らす。
南海フェリーの撤退は、地域の交通網に大きな影響を与えることが予想される。関西と四国を結ぶ代替交通手段の確保が急務となるが、鉄道連絡船の復活は困難であり、今後の交通政策の在り方が問われている。



