東京女子医科大学病院リハビリテーション科教授・基幹分野長の若林秀隆氏は、著書『幸福寿命』(日刊現代)において、高齢者の健康維持には筋肉量・筋力が低下した状態「サルコペニア」や、加齢による心身の衰え「フレイル」の予防が重要だと強調する。特に、入院中の栄養管理が不十分だと、最悪の場合「病院のベッドで餓死する」危険性があると警鐘を鳴らし、患者や家族が入院初日に医師や看護師に相談すべき具体的なポイントを提唱している。
サルコペニア・フレイル予防の鍵は栄養管理
若林氏は、「サルコペニア・フレイルに関する栄養管理ガイドライン2025」を紹介。同ガイドラインでは、死亡、入院、日常生活動作(ADL)低下などの転帰不良を改善するために、十分なエネルギー投与や体重適正化を目指した介入、タンパク質やビタミンDなどの栄養素、地中海食やDASH食などの健康的な食事パターンが推奨されている。地中海食はうつ予防にも有用な可能性があるとの研究(Rudzinska et al., 2023)があり、幸福寿命の延伸に寄与するとされる。
入院中の栄養不足がもたらす深刻なリスク
若林氏は、入院中に栄養不足が続くと筋肉が急速に減少し、フレイルが進行するリスクを指摘。最悪の場合、栄養不良が原因で死亡するケースもあると警告する。特に高齢者は、疾患や手術による代謝亢進でエネルギー消費が増える一方、食欲低下や食事制限により栄養摂取が不足しやすい。このため、入院初日から栄養状態を評価し、適切な栄養介入を行うことが不可欠だという。
入院初日に医師に相談すべき3つのポイント
若林氏は、患者や家族が入院初日に医師や看護師に確認すべきこととして、以下の3点を挙げる。第一に、現在の栄養状態の評価と、必要なエネルギー量やタンパク質量の目標設定。第二に、経口摂取が難しい場合の栄養補給方法(経腸栄養や静脈栄養)の検討。第三に、リハビリテーションと栄養管理を連携させた「リハビリテーション栄養」の実施である。若林氏は「栄養不足のまま筋トレを行うと、むしろ筋肉を減らすことになる」と注意を促す。
健康的な食事パターンの重要性
若林氏は、高血圧予防・改善に有効なDASH食や、日本食パターンの遵守も推奨する。研究では、日本食パターンがうつ症状の軽減(Miyake et al., 2025)や筋力低下の減少(Shimizu et al., 2023)と関連することが報告されている。バランスの良い食生活は、幸福寿命を延ばすために重要だと結論づけている。



