不安定な中東情勢に伴い、プラスチック製品の原料「ナフサ(粗製ガソリン)」の供給不安が続く中、木材を薄く削った包装材「経木(きょうぎ)」が注目を集めている。元々は紙の代わりにお経を書くのに使われ、江戸時代以降は食品の包装材などに活用されてきた。普代村で経木の製造・販売を手がける伊藤あゆみさん(33)は「今だからこそ、地域の資源に目を向けてほしい」と語る。
機械で削り出し、そりを戻すルーチン
先月下旬、産直だった建物を改修したプレハブ型の工房は、木の爽やかな香りで満ちていた。端の方でシナやスギなどの木材をのせた機械が、「ガチャン、ガチャン」と左右に高速で動く。刃物で削り出てくる厚さ約0・2ミリの経木のそりを戻し、束にして乾燥させる。仲間2人とこのルーチンを朝から晩まで続ける伊藤さんは「加工してすぐに生活で使える形になるのが魅力です」と笑う。
大手ゼネコンから地域おこし協力隊へ
伊藤さんは愛知県一宮市出身。大学院修了後の約5年間、大手ゼネコンの社員としてダムなどの建設工事を監督する仕事をしていた。「自然を相手に体を動かして仕事がしたい」と思い立ち、2023年に地域おこし協力隊として普代村に移住。山に分け入りチェーンソーなどの使い方を学びながら、「環境に負荷をかけない林業のあり方」を追い求めるようになった。
経木との出会いと独立
ある日、林業関係者から「経木って知ってる?」と聞かれた。当時は切り出した丸太の使い道を模索しており、すぐに興味がわいた。抗菌性や湿度の調整に優れ、かつてはおにぎりを包むなど日常的に使用されていた昔ながらの知恵。製造元の減少で、「絶滅危惧種」になりつつあったが、「伝統的だけど理にかなっている」とひかれた。24年春頃から雫石町にある、東北地方で数少ない経木の製造元に毎週足を運び、カンナの研ぎ方や機械の使い方などを一から体にたたき込んだ。地域おこし協力隊の任期を終えた2月、「木こり屋」という屋号で独立した。
業務用として月20万枚以上を出荷
現在は、花巻市の大内商店が販売する「花巻納豆」の包装や、秋田県大仙市の「木元桜皮工芸」が製造する茶筒の材料などとして使用されている。宮古市の「寿司と肴うちだて」では切り身の保管に活用しており、店主の内舘義幸さん(77)は「水分をほどよく取ってくれて、魚の鮮度を保つのになくてはならない」と魅力を語る。経木はナフサ由来のビニール袋などの代用がきくこともあり、現在は業務用として月に20万枚以上を出荷。最近は一般向けに、県内の道の駅で販売を始め、経木のメモ帳やオーナメントなど、包装以外の新たな構想も膨らむ。
将来的には「経木が当たり前のものとして今の暮らしに溶け込むことが目標」と伊藤さん。これからも経木の可能性を追求し続けるつもりだ。



