全国高校総合体育大会(インターハイ)陸上競技は、猛暑対策として史上初めて全7日間を夜間開催とした。5日に滋賀県彦根市で行われた男子1600メートルリレー決勝は、ナイター照明の下で午後9時40分を過ぎて終了した。今大会は日中に競技を行わず、すべて午後5時以降に開始。5日の最高気温は35度を超えたが、競技終了時には28度まで下がり、選手からは「涼しくて走りやすい」と歓迎する声が出た。
北海道大会の熱中症多発が転機
異例の運営に踏み切ったきっかけは、2023年に北海道で開かれた大会だ。冷涼な気候を想定していたが厳しい暑さに見舞われ、選手や観客が次々と熱中症になり、競技場の医務室のベッドが全て埋まる事態となった。
インターハイの夏季30競技で陸上は最多の3000人超が出場する。日本陸上競技連盟は「命に関わる重大な事態」と危機感を強め、昨年3月、暑さ指数(WBGT)が31以上の場合、各種大会で競技を原則中止する方針を表明した。日本スポーツ協会の指針に合わせたもので、暑さ対策が不十分なら主催者から外れる意向も示した。
夜間開催の成果と課題
陸連の名が大会から消えると、選手の成績は全て「非公認記録」となるため、全国高校体育連盟(高体連)や開催地の自治体は、会期を5日間から7日間に延ばし、各日の実施種目を減らして午後5~10時に収める夜間開催を選択した。
期間中、ウォーミングアップを始める午後4時台でもWBGTが31を下回らず、競技開始を15分程度遅らせる日があったが、救急搬送に至る熱中症は発生しなかった。一方、照明の追加や計測機器のレンタル期間延長で、主に開催自治体が負担する運営経費は当初想定から約4000万円増の約1億9000万円に膨らんだ。今後は会期短縮に向け、一部種目の別会場開催や種目数の削減を検討するという。
スポーツ界全体への波及
スポーツ界では今夏、酷暑による深刻な事態が相次いだ。7月のプロ野球二軍戦では複数の選手が熱中症の症状を訴え、試合がノーゲームに。8月にはラグビー・リーグワン2部の選手が練習中に熱中症となり、搬送先の病院で亡くなった。
日本陸連は、高校生以下の大会では抜本的な対策が急務として、学校の夏休みに屋外で全国大会を開催してきた従来モデルの見直しも提言する。田崎博道専務理事は「陸上だけではなくスポーツ界全体で子どもたちの命、安全を真剣に考えていく。そうした責任を果たす決意と覚悟が必要だ」と訴えた。
「酷暑日」最多34地点
気象庁は今年4月、最高気温40度以上の日を指す「酷暑日」を天気予報の用語に追加した。用語の追加は「猛暑日」が制定された2007年以来。今年7月21日には岐阜県と愛知県の3地点で導入後初の酷暑日となった。
同庁によると、国内では1927~2025年に40度以上を延べ108地点で観測したが、4割弱(41地点)が23~25年の3年間に集中。今年は史上最多の34地点(22日時点)で観測されている。



