作家で生活史研究家の阿古真理氏が、連載「産むも 産まぬも」の総括として、1年半の取材で見た少子化社会の現状をまとめた。2007年には生殖補助医療(体外受精や顕微授精など)で生まれた子どもは出生数全体の1.8%だったが、2022年には約10.0%と15年で5.6倍に増加している。
不妊治療の現実と負担
こども家庭庁のウェブサイトは「不妊は特別ではない」としているが、阿古氏はその言葉を「保険適用で子どもを増やしたい宣伝コピー」と感じている。不妊治療は特に女性の心身の負担が大きく、仕事との両立は容易ではない。保険適用で基本的に3割負担でも、体外受精は1回当たり約10万円以上の経済的負担がある。保険適用前に13年続けた治療にかかった総額について、「総額でポルシェが買える」と表現した女性もいた。
不妊治療を受けたが授かっていない人の取材では、夫婦共に仕事のストレスが大きいと感じられた。2024年にベストセラーとなった『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆著)は、仕事と自分の時間の両立の難しさを指摘しており、この問題が不妊にもつながっている可能性を阿古氏は示唆する。
「産んだ人」の居場所のなさ
ストレスフルな社会は、「産んだ人」の居場所のなさにもつながっている。映像作家で『マザリング』の著者である中村佑子氏は、効率的で機能的な都市空間や仕事の流れと、子育ての時間の間に深い溝があると指摘した。都市空間はバリアフリーが推奨されてもなお、健康な働き盛りの仕様で、エレベーターが駅のホームの端にしかない、道路の段差や幅の狭さ、交通量の多さなど、子どもやベビーカーを押す人には不便で危険だ。赤ちゃんや子どもが外で大きな声を出すと、うっとうしがられる。
少子化で子どもが身近にいない人が増えた結果、子どもや子連れの大人が排除されやすくなったのか、それとも排除されるから少子化が加速しているのか。阿古氏はこの問いを投げかけている。



