静岡市清水区三保の御穂神社へと続く松並木の参道「神の道」で昨年8月、倒れた松で電線が切れて発生した停電で、宿泊客への返金などの損害を受けたとして、羽衣ホテル(清水区三保)代表取締役(68)が、静岡市を相手取り約75万円の賠償を求めて静岡地裁に提訴したことが分かった。世界文化遺産富士山の構成資産・三保松原の管理のあり方を問う裁判として注目される。
訴状の主張
訴状では、世界遺産の構成資産である三保松原は、より綿密で専門性の高い管理と保全が求められている。それにもかかわらず、市などが設立した同松原の保全・再生を担う一般財団法人「三保松原保全研究所」は、日頃の観察業務がなされていれば倒木の危険を察知することが十分可能だったのに、これを怠り安全管理を尽くす使命を果たさなかったと主張。倒木の前日と当日には清水区長や住民らから倒れる危険があるとの通報を受けながら、迅速な対応を取らなかった。また、倒木後の松の腐朽率も50%を超え、危険木として伐倒すべき対象だったのに適切な処置を怠ったとしている。代表取締役は「市の管理がいかに杜撰(ずさん)か知ってもらいたい」と訴える。
市側の反論
一方、市側は今月16日の第2回弁論で提出した準備書面で、専門家による適切な管理を実施しており、倒伏事故に関して回避可能性は認められず、仮に認められたとしても、停電による原告の損害は間接損害で、賠償責任は負わないと主張した。
原告の思い
代表取締役は「倒木した松も含め、神の道の松はほとんどが古木で、人の往来も多い。一つ間違えれば大惨事となる恐れがあり、市は文化や自然とともに人の安全を守る義務があることを肝に銘じてほしい」と話している。
◆ 神の道=御穂神社に通じる約500メートルの松並木の参道。樹齢200~300年の古木約260本が並び、「羽衣の松」に来臨した神が歩いたと伝わる。三保松原の松は明治に入り、旧幕臣により多くが換金目的で伐採されたが、この参道の松だけは当時の村民が体を張って守ったとされる。