氷見市を中心に県内に大きな被害をもたらした記録的な大雨は、8月27日未明の降り始めから9月3日で1週間となった。氷見市は2年8か月前の能登半島地震でも広範囲に液状化の被害を受けた。地震からの復興途上で起きた浸水被害が重くのしかかるが、被災者らは人々の助けを借り、生活再建に進み出そうとしている。
浸水で営業継続は岐路に
菓子パンや野菜などが並ぶ氷見市北大町の「恵比寿食料品店」は、地域の高齢者らが徒歩で訪れる小さな店だ。能登半島地震にも耐えた築約80年の店舗は、大雨で浸水し、営業継続の岐路に立つ。
同店は、27日未明からの大雨で店舗に水が入り、午前11時頃には約50センチの高さになった。同店を夫の博幸さん(72)と切り盛りする恵比寿泰子さん(73)は、水かさが増していくのを目の当たりにした。急いで商品を上の棚に移したが、倉庫にあったティッシュペーパーなどは水につかった。
能登半島地震では、入り口のガラスが2枚割れ、床にひびが入り、壁のタイルが落ちた。今も、入り口付近はゆがんでいる。
しかし、「大雨はうちにとっては、地震よりも深刻だ」という。飲料などが入った冷蔵庫3台が水につかって壊れた。常連客らに好評の地元にある豆腐店の絹豆腐も、保存場所がないため仕入れられない。「新しい冷蔵庫を買いたくても値段が高騰しているし、注文してもいつ届くかも分からない」とつぶやく。
地震では、割れたガラスの修繕に約3万円かかったが、今回の被害は100万円ほどになると予測。「100万円を超えたら、店を続けられないかもしれない」と博幸さんは話す。
地震の影響で県外に引っ越したり、施設に入居したりする客が増え、経営は赤字続きだという。それでも、車が運転できない常連の高齢者から「元気なうちはやめないで」と声をかけられる。
「地域の人のために」との思いで、翌28日には店を再開。約10人の客が集まり、「雨は大丈夫だったか」や「大変だったね」と声をかけながら、互いの無事を確かめ合った。
泰子さんは「頼ってくれる人のためにも、もうしばらくは踏ん張りたい」と話している。
復旧直前、再び被害
氷見市指崎の温泉宿「湯の里 いけもり」は大雨で露天風呂に面した山肌が崩れ、巨大な落石が散らばり、露天風呂には土砂が流れ込んだ。能登半島地震からの復旧工事が終わる直前の再びの被災だった。
「まさか今度は大雨の被害を受けるとは」。そう話すのは女将の池森典子さん(54)だ。山肌からいくつもの巨大な石が露天風呂の近くまで落ちてきた。片付けようにも、建物と山に阻まれて重機を近づけられない。池森さんは「どうすれば石をどけられるのか」と途方に暮れる。
また、温泉の成分を含んだ水が出るようになったといい、温泉にお客を案内できない状態だ。温泉をくみ上げるポンプが水につかり、客室に響くほどの轟音を出すようになった。
地震では外壁がひび割れ、九つの窓枠が傾き、瓦が落ちた。約1000万円かけて修理を続け、今月下旬には段差ができた脱衣所の床や廊下を元に戻す最後の工事に取りかかろうとしていた。地震から時間が経過し、客足が戻ってきた中での再度の被災に心が折れそうになった。
それでも、常連客から「何もできないけど、また行くね」とSNSや電話で50件以上の連絡があった。池森さんは「返事をするのが大変だった」と笑いつつ、「みんなが気にしてくれて励みになった」という。
8月30、31日にはボランティアも駆けつけてくれた。石川県珠洲市で働く知り合いの女将が紹介してくれた。池森さんの知人も含め、17人が露天風呂に入り込んだ土砂をスコップなどで取り除いてくれた。「仲間のつながりってすごい」。苦しみの中にあっても、心が温かくなった。
池森さんは「私は、前向きなのが取りえ。ここでつぶれるわけにはいかない」と前を向いている。
被災移住の高岡でも
住宅76棟(1日午前7時現在)が床上・床下浸水し、氷見市に次ぐ大雨の被害を受けた高岡市。石川県七尾市の自宅が能登半島地震で壊れ、高岡市伏木地区に移住した女性は、今回の大雨で経営する食堂が浸水する被害を受けた。
2024年11月にオープンした高岡市伏木古国府の「お食事処 ほろ馬車」は、ボリュームたっぷりのハンバーグやエビフライなどの定食を目当てに、地元住民らが通う大衆食堂だ。
店主の川端珠実さん(53)は石川県七尾市出身。24年1月の地震で、七尾市の川端さん宅は半壊した。当時は独立を模索して飲食店を退職したタイミングで、その後、母の出身地であった伏木地区への移住と出店を決めた。
順調に伏木に固定客をつかんでいったが、8月27日未明からの大雨で、調理場や食材置き場に高さ15センチほどまで水が入り込んだ。複数あるうち、メインの冷蔵庫が水につかって壊れた。
27日は1日がかりでモップで床をふき、28日に再開しようと考えていたが、この日も雨が降り、再び15センチほど浸水した。「きれいに掃除したのに。まさか2回浸水するとは」とうんざりした。
それでも「通ってくれている人たちのためにも一日も早く開店させねば」と、31日にランチ営業を再開した。しかし、お酒のジョッキを冷やしたり、調理済みの料理を保管したりする冷蔵庫が故障しているため、夜の営業の再開は見通せない。
近所の人や常連客が心配してくれ、「食べて支援するよ」と声をかけられた。川端さんは「ここは温かい人たちばかり。くよくよせず、何とかなると思ってできる範囲で営業する」と決めている。



