個人情報を外部に渡すには本人の同意が原則必要だが、AI(人工知能)開発や統計作成のためなら同意は不要とする改正個人情報保護法が7月に成立した。政策立案にあたった個人情報保護委員会は、なぜこのような改正を図ったのか、課題はどこにあるのか。行政組織に詳しい憲法学者の沼本祐太さんに聞いた。
「保護」と「利活用」の二つの目的
個人情報保護委員会は、いわゆる「独立行政委員会」の一つに位置づけられている。これは、政治的中立性など、その組織が担う任務について、特に内閣や大臣からの独立性が求められる特別の理由がある場合に設置される組織だ。個情委のほか、公正取引委員会、原子力規制委員会などが該当する。
個情委は公的部門の監督だけでなく、民間部門に対する監視も担っている。とりわけ後者との関係では、強い政治的交渉力をもつ大企業が利活用を強力に推進しようと政府に働きかけることなどを考えると、個情委が適切に任務を遂行するために、独立性は重要であると言えそうだ。
では、個情委はその名の通り、純粋に個人情報保護に専心する組織と言えるだろうか。実は、個人情報保護法が定める個情委の「任務」には、主目的である「個人の権利利益の保護」に加え、「個人情報の有用性」への配慮も書き込まれており、緊張関係に立つ二つの目的をあわせ持っている。
対立する目的の同居がもたらす不透明化
副次的目的であっても、一つの組織に対立する目的を同居させると、内部で利害調整が行われ、今回のように政策立案を行う場合にもそれが不透明化する懸念がある。分かりやすい例が、かつての原子力政策における「産業振興」と「安全規制」の分離だ。



