大雨被害の城下町・坂井市、レベル4警報でも事務所浸水…現場で見えた防災課題
大雨被害の坂井市、レベル4警報でも浸水…防災課題

8月末の記録的な大雨は福井県北部に甚大な被害をもたらした。事前にどのような防災対策を講じ、いざという時にはどうやって命を守るのか。現場の取材を通じて見えてきた課題を検証する。

坂井市で住宅浸水が847棟、レベル4警報でも被害拡大

8月29日午後9時52分、気象庁が発する防災気象情報の中で、切迫度が上から2番目に高い「レベル4大雨危険警報」が坂井市に出された。30日午前4時30分には、既にレベル4が出ていた福井、大野、勝山の3市に、最も切迫した「レベル5大雨特別警報」が発令された。県内では初で、気象庁や自治体からは繰り返し、危険な災害が起きうる状況であることが強調された。

だが、丸岡城(丸岡地区)の周辺など、市街地を含めた広範囲での浸水や冠水が目立ったのは坂井市だった。県のまとめ(9月29日現在)によると、床下と床上を合わせた住宅の浸水被害は坂井市847棟に対し、福井市656棟、勝山市34棟、大野市16棟だ。

丸岡城の近くで40年ほど寝具店を営む岡崎一生さん(79)は「建物内にまで水が入ってきたのは初めて。周辺の道路は川のようになっていた」と振り返る。店舗の事務所は床上40センチまで浸水。水につかった布団や毛布など50万円相当を廃棄し、業務用の車2台も廃車となった。「これでもレベル4なのか」と首をかしげる。

田島川の形状が影響か、用水路の氾濫も

なぜ坂井市で被害が広がったのか。河川の氾濫に詳しい福井工業大の西川隼人教授(防災工学)は、丸岡地区を流れる田島川の形状が影響したとみる。この川は30日午前1時半には氾濫していた。

西川教授は「降雨量が多かったことに加え、田島川は丸岡城を囲うように直角に流れている箇所があるため、曲がり角で水があふれた」とし、「川そのものが満水だったため、末端の用水路の水も行き場がなくなり多くの箇所で氾濫した」と説明する。

防災気象情報の機械的判断、レベルと被害の乖離

レベル1から5までの5段階で災害の切迫性を伝える防災気象情報の運用は、今年5月に始まったばかりだ。福井地方気象台によると、「レベル5大雨特別警報」は、河川氾濫などの危険度を示す二つの指数に基づいて出される。レーダーの数値などを基に1キロ四方ごとに計算され、20~30地点で基準値を超えると、レベル5が発表される。

福井など3市では今回、河川氾濫の指数が20地点以上で基準値を超え、レベル5の判断に至った。一方、坂井市では基準値を超えた地点が20に達しなかった。同気象台の担当者は「気象台としては、レベル4を出しているので注意喚起はできた。機械的に発表しており、感情や経験は介入しない。結果として、被害とレベルの程度が合致しないこともある」と説明する。その上で、今回の発表の妥当性については、「坂井市がレベル4相当なのか5相当なのかは、今後(改めて)検討する必要があるかもしれない」と話す。

専門家「レベルに頼りすぎるのは危険」、日頃の備えを

兵庫県立大の木村玲欧教授(防災心理学)は「レベル5ではないから安心していいということはまったくない。レベルは1段階ずつ上がるわけでもなく、急にレベル4が出ることもあり、警戒レベルに頼りすぎるのは危険だ」と指摘。「事前にハザードマップを活用して自宅やよく行く場所の浸水状況を確認しておく必要がある。災害が起きて意識が高まっている今こそ備えてほしい」と話している。

防災気象情報とは「特別警報」「危険警報」「注意報」といった5種類の情報と、5段階の警戒レベルを組み合わせ、災害が迫っていることを伝える。災害を大雨、河川氾濫、土砂災害、高潮の4種類に分類し、それぞれ発表している。市町村は防災気象情報に基づき、住民に避難指示などを出す。