「本当に3日間で終わるのか…」――ゴミ屋敷専門の片付け業者「イーブイ片付けチャンネル」のスタッフも焦るほどの量が、一軒の家に詰まっていた。作業員7人が3日間かけて運び出したゴミは、トラック換算で16トン。その中には、飼っていた猫の死骸も含まれていた。
依頼主は、80代の父親を施設へ送り出した子どもたちだ。家は売却が決まっており、全撤去が条件だった。「残すモノはほとんどない」という判断だった。
妻の施設入居がきっかけで崩れた生活
母親はもともと物を溜め込む傾向があり、子どもたちが物心ついたころにはすでに家の中は物であふれていた。3世代で住んでいた家でもあり、年月とともに物量は増えていった。転機は母親が施設に入居したことだった。
元々きれい好きだった父親は、妻がいなくなったことを境に片付けられなくなった。新聞紙やゴミ袋が目立つように溜まり始め、子どもたちが「片付けよう」と声をかけるたびに喧嘩になった。イーブイの二見氏によれば、優に20年分のゴミがあったという。
「自分の生活の柱になっていた人がある日突然いなくなったとき、生活がこれほど崩れるのかと思い知らされます」(二見氏)
孤独な住人たちの共通点
二見氏は以前、長年姉と2人暮らしをしていた男性の家を片付けたこともある。親はすでに他界し、独身で子どももなく、姉が亡くなって身内が1人もいなくなった弟は、認知症が進んで施設に入居することになった。
その部屋には、姉の写真やアルバムが枕元にいくつも並べられていた。家中がゴミと物で埋まる中で、姉との思い出だけが大切に守られていた。
「家への関心が失われたとき、ゴミ屋敷へと変わり始めてしまう」と二見氏は指摘する。同居していた家族がいなくなることで、生活の維持が難しくなり、結果としてゴミ屋敷化するケースは少なくない。
今回のケースでも、父親は1階の和室で生活していたと見られるが、そこは人がくつろげるスペースすらない状態だった。風呂場や洗面スペースもゴミが山積みで、使える状態ではなかった。
子どもたちの本音
片付け作業中、子どもたちはほとんど言葉を発さず、黙々と作業を続けた。彼らは長年、父親の状態に悩み、何度も片付けを促しては拒絶されてきた。施設入居の決断も、簡単ではなかったはずだ。
「親がセルフネグレクト状態になると、子どもは罪悪感と無力感に苛まれる。片付けを依頼するのは、親への最後のケアのつもりなのかもしれない」と二見氏は語る。
16トンのゴミと猫の死骸を前に、子どもたちは無言で分別を続けた。その背中には、長年の葛藤と、それでも親を思う気持ちがにじんでいた。



