被災者の入浴支援、自衛隊が発電機と燃料提供し送迎…車内の「上を向いて歩こう」に涙
被災者の入浴支援、自衛隊が発電機と燃料提供し送迎…車内の「上を向いて歩こう」に涙

石巻市北上地区の災害対策支部は、風呂が使えない被災者のために入浴支援の準備を進めていた。山あいの追分温泉は風呂設備が無事で、湧き水を取るため断水の影響もなかった。問題は停電で湯が沸かせないことで、主人の横山宗一さんは薪を集めて庭で湯を少量ずつ沸かし、温泉に避難している人たち限定で入浴を再開させていた。

これを北上全域の人が利用できれば大いに助かると、今野照夫さんらが調整した結果、自衛隊が全面協力することになった。北上の支援に入っていた陸上自衛隊第14旅団が3月22日、予備の発電機1台を追分温泉に貸し出し、当面の燃料として自衛隊の重油や軽油も提供した。

自衛隊の送迎で避難所と温泉を結ぶ

住民の多くは車を流されてしまい移動の足がない。そこで隊員がマイクロバスを運転し、各避難所と追分温泉を結ぶことにした。

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元保育所長の鈴木光子さんはこのころの入浴支援のことをよく覚えている。津波で2時間漂流し、偶然流れ着いた今野さんの命を救った人だ。家が全壊して震災翌日から近所の高齢者施設に夫と身を寄せていた。「顔を拭くだけの日も多かったから、お風呂はありがたかったです」と振り返る。

車内で流れた「上を向いて歩こう」に涙

入浴の順番が回ってくるのは数日おきだったが、避難先は水も電気もなく、夜はロウソク頼みの生活だったので、いい気分転換になった。

20分ほどの道中、津波をかぶらず無事だった家がいくつも車窓越しに見える。今ごろ一家でだんらん中かな、と想像したりする。自衛隊員が車内で音楽をかけてくれた。「上を向いて歩こう」が流れてきたときは胸がつまり、涙がぽろぽろとこぼれた。

連載「今野照夫さんの震災日記」は宮城版のシリーズで、過去回は読売新聞オンラインで読める。2011年、東日本大震災の津波が宮城県の石巻市北上総合支所をのみ込み、職員や避難した住民57人のうち54人が犠牲となった。支所の地域振興課補佐だった今野照夫さんも外に投げ出され、2時間漂流したのちに生還。翌日から始まった災害対応を420日間にわたり克明に記録し続けた。

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