県内最大の酪農地帯・朝霧高原(富士宮市)で、牛の暑さ対策に生産者らが追われている。富士山麓にあって「夏でも涼しい」はずの同高原だが、最高気温が30度を超える日もしばしば。国立公園内における屋根の色制限など、牛舎の暑熱対策の妨げとなる法規制の問題点も指摘される。観光客に人気の放牧風景にも変化が表れるのではと、危惧する声があがる。
送風機や散水で対策も、猛暑と燃料費に頭抱える
標高700~1000メートルにある同高原で肉牛を飼育する生産者は「牛舎の天井に数十台の大型送風機を備え、自家発電機も整えて万全のつもりだったが、最近の猛暑と値上がりで軽油代がものすごい」と頭を抱える。
同高原にある県畜産技術研究所では今年から、本格的に暑熱対策の研究を開始した。手始めに多くの牛舎が採用する牛の体周辺への散水について、実施時間帯と効果との比較実験を行っている。
昼間の最も暑い時間帯の散水が一般的だが、夜間に行えばよく眠れてストレスが減る、食事時間に行えば食欲が進む――といった仮説を立てて検証する。「水道代などのコストとの見合いで最適な方法を探りたい」と平井亮上席研究員は意気込む。研究所の計測では、最近20年間で3度程度、昼間の最高気温が上昇している。
乳牛は暑さに弱く、生産性低下の恐れ
乳牛に与える影響は、肉牛に比べて大きい。体温調節のために余計なエネルギーを消費し始めるとされる上限臨界温度が、代表的な乳牛のホルスタイン種は25度前後と黒毛和種(肉牛)より低いためだ。
ホルスタイン種は暑さで乳の量が少なくなり、病気への耐性や繁殖性(人工授精の成功率)も落ちるとされる。市内では約60の牧場が、約6000頭の乳牛を飼育するが、その多くがホルスタイン種とみられる。乳牛牧場主の一人は「屋根を白に塗装して、牧舎内の暑さを和らげたいと思っている牧場は多い」と語る。市によると、一般的な屋根素材である鉄鋼板の色を黒系から白系に変えると、牛舎内温度は4~5度下がることが実証されている。
国立公園の景観規制が壁に
だが、国立公園エリアにある同高原で、屋根の色彩は自由ではない。自然景観との調和を目的に、自然公園法などにより建築物の色彩に一定の制約があり、特に牧場が広がる国道139号周辺では屋根の色彩を原則、灰黒系かこげ茶色と定めているからだ。
一帯を地盤とする芦沢秀典市議は今年の市議会で「景観を守れても、家畜が守れない制度はおかしい。そもそも酪農の経営が維持できなければ、現在の朝霧高原の景観は保てない」と訴えた。これに対して、市の担当者は「断熱材や遮熱効果がある塗料が普及している。困ったら相談してほしい」と話している。



