作家の黒井千次さん死去、94歳…「内向の世代」代表し老い見つめる
作家の黒井千次さん死去、94歳…「内向の世代」代表

「内向の世代」を代表する作家の一人で、現代の老いの形を見つめたエッセーでも知られた黒井千次(くろい・せんじ、本名・長部舜二郎=おさべ・しゅんじろう)さんが、12日、肺炎のため死去した。94歳。喪主は長男、聡介さん。

労働と人間を主題にした作品群

東京生まれ。高校時代に小説家を志し、戦後派作家の野間宏に勧められ東大経済学部に進学した。卒業後、富士重工業に勤めながら、「聖産業週間」をはじめ労働と人間の関わりを主題とした作品を執筆。「穴と空」「時間」など、5度芥川賞の候補になった。

古井由吉さんや坂上弘さんらの作家とともに、人間の内面を深く見つめる「内向の世代」と呼ばれた。

受賞歴と長寿社会へのまなざし

日米講和を巡りデモ隊と警官隊が衝突した「血のメーデー事件」を扱った「五月巡歴」。郊外の都市生活者の生態を描き、1984年の谷崎潤一郎賞を受けた「群棲」。95年の読売文学賞受賞作「カーテンコール」など、数多くの小説を執筆。2006年には、「一日 夢の柵」で野間文芸賞を受賞した。

「高く手を振る日」「流砂」など、長寿社会における現代の老いの形を文学を通して見つめ直した。05年に本紙夕刊で始まったエッセーは、「時のかくれん坊」「日をめくる音」と題名を替え、長期連載となった。

温厚な人柄で多くの作家に慕われる

温厚な人柄で多くの作家にも慕われた。02年から4年間、日本文芸家協会理事長、14年から日本芸術院長を務めた。