陸上自衛隊のレンジャー訓練において死亡事故が後を絶たない。軍事ジャーナリストの清谷信一氏は、自衛隊全体では2004年から2013年の10年間で教育・訓練中の死亡事故が計69人に上ると報告されていると指摘する。しかし、それ以降の統計は公表されておらず、実態の把握が困難な状況だ。
近年の相次ぐ死亡事故
2025年8月には大分県の日出生台演習場で西部方面戦車隊の訓練中に隊員2人が死亡。さらに2026年4月には同演習場で10式戦車の射撃訓練中、砲弾が砲内で破裂し、3人の隊員が死亡する重大事故が発生した。清谷氏は「どんなに気を付けても、不幸な事故は起こるときは起こる。だから事故を起こさないような不断の努力は必要であり、起きた際の対応も大切だ。だが陸自にはその両方に対する当事者意識と能力が欠如している」と批判する。
遺族訴訟が浮き彫りにする問題点
こうした事故を受け、遺族が国を相手取って訴訟を起こしている。原告側は「これじゃ人は来ませんよ」と訴え、安全軽視の姿勢と組織的な疲労が事故の背景にあると主張する。訓練内容の過酷さや安全対策の不備が指摘される中、自衛隊の人員確保にも影響が出る可能性がある。
清谷氏は、陸自の安全文化の問題点として、事故後の検証や再発防止策の不十分さを挙げる。特にレンジャー訓練は身体的・精神的負荷が極めて高く、適切な健康管理や装備の点検が欠かせないが、それらが軽視されているという。
組織疲労と安全軽視の構造
自衛隊全体で慢性的な人員不足が続く中、訓練の負担は増大している。限られた人員で厳しい訓練をこなすため、安全確認がおろそかになるケースが少なくない。また、事故を起こした部隊や個人に対する不利益を恐れ、事故の隠蔽や過小報告が行われる可能性も指摘されている。
清谷氏は「陸自には事故を防ぐための不断の努力が必要だが、現状では当事者意識と能力が欠如している」と述べ、組織としての根本的な改革を求める。遺族訴訟の行方は、自衛隊の安全文化に一石を投じるものとなるだろう。



