災害時に被災地で活動するボランティア団体を事前に登録する国の制度の活用が低調だ。様々な団体の情報を自治体と共有して迅速な支援につなげる狙いで、1年余り前に創設されたが、「メリットが見えない」と敬遠され、登録は33団体にとどまる。7月に起きた熊本地震でも延べ約250の支援団体の多くが未登録で、周知不足などの課題が浮かぶ。
制度の概要と登録状況
2025年7月に始まった「被災者援護協力団体登録制度」は、登録団体の活動地域や内容などをリスト化し、自治体と共有する仕組みだ。災害時に自治体が活用し、被災者の要望に応えられる団体に対し、速やかに協力を依頼できるようにする。団体側も、被災者が必要とする支援情報などを自治体から受けることが可能になるという。
熊本地震の被災地で、自治体と協力してボランティア団体の連携支援に取り組む「くまもと災害ボランティア団体ネットワーク」(熊本市)の樋口務代表理事(65)は「登録団体には、政府から専用の腕章が配布され、活動の際には被災者も安心して任せることができる」と話す。
登録の伸び悩みと現場の声
内閣府によると、登録は33団体(8月21日時点)と伸び悩む。ネットワークによると、熊本地震の被災地で活動する延べ約250団体で登録しているのも6団体(同)のみだ。
熊本県は「10年前の経験を生かして行政と団体が連携している」(健康福祉政策課の担当者)とし、制度を活用して支援を依頼することはなかったという。
未登録で地震発生翌日に被災地に入った「災害救援レスキューアシスト」(奈良県宇陀市)は、損壊家屋から被災者の家財を取り出すなどの支援活動を実施してきた。15日には、独自の聞き取り調査で物資不足がわかった福祉施設に、冷凍のおかずや水を届けた。
「登録すれば、自治体の要求を優先することで、被災者ニーズに沿った活動が制約されるかもしれない懸念があった」と中島武志代表理事(49)。「行政との連携に問題を感じたことはなく、メリットがわからなかった」と語る。
被災者に支援物資を届けた「被災地NGO恊働センター」(神戸市)も未登録で被災地入りした。1995年の阪神大震災直後に結成され、全国で活動してきた実績があり、頼政良太代表(38)は「長年の活動で信頼も得られている。『お墨付き』がなくても支障ない」と言い切る。
登録団体の不満と今後の対応
登録団体からも不満の声が上がる。熊本県内の避難所を回り、必要な物資の情報を支援企業などに伝える橋渡し役を担ってきた「四番隊」(千葉県袖ケ浦市)の伊藤純代表理事(52)は「被災者にも自治体職員にも制度が十分認知されておらず、腕章をしていると、かえって怪しまれた。制度が今後よくなるようにしたいと思って登録したが、まず周知が必要」と指摘する。
内閣府は、どこで災害が発生しても、自治体が多数の団体に速やかに支援を要請できるよう、さらに登録数を増やしたい考えで、25年度に4回実施した説明会を26年度も予定する。防災担当者は「団体側の懸念を払拭し、自治体と各団体との『顔の見える』関係づくりを促したい」と話す。
専門家の見解と制度の背景
関嘉寛・関西学院大教授(ボランティア論)の話「自治体とボランティア団体が平時から信頼関係を築けるようにする制度の趣旨は重要。登録すれば情報を与えるという一方的な姿勢でなく、自主性を尊重し、現場のニーズに沿った支援につなげることが大切だ。団体リストを活用し、日常的に合同訓練を実施するなど具体的な活用策が見えてくれば登録を検討する団体も増えるのではないか」
被災者援護協力団体登録制度は、災害の被災地で「相当程度」の支援実績などがあるボランティア団体を事前に登録する制度。今年度中に登録団体をデータベース化する。2024年の能登半島地震で、被災地に入った300超の団体の詳細な情報が自治体側になく、活動内容の聞き取りなどに時間を費やしたため、団体がすぐに活動できないといった混乱が生じたことを教訓に創設された。



