人口350人の村で住民投票、独身男性難民1200人収容計画に抗議
人口350人の村で住民投票、難民1200人収容計画に抗議

英イングランド中部にある人口わずか350人の小さな村ピディントンが、難民認定申請者の収容をめぐる全国的な議論の最前線に立たされている。近隣の使われなくなった軍用施設に独身成人男性の難民認定申請者1200人以上を収容する政府計画に抗議するため、ピディントンでは15日、「英国からの独立」の是非を問う住民投票が実施された。

「英国からの独立」問う象徴的な住民投票

ピディントンは店すらない田舎だが、この皮肉を交えた住民投票によって一躍ニュースの見出しを飾ることとなった。住民投票の結果に法的拘束力はなく完全に象徴的なものだが、近隣の使われなくなった軍用施設に難民認定申請者を収容する計画に対するピディントン村の回答だ。

村人のイアン・ダービーさん(63)はAFPの取材に対し、「他の人々が採ってきた手法とは異なるやり方で、どのように自分たちの声を届けるかという取り組みだ」と語った。ダービーさんは難民認定申請者受け入れについて、村としてはある程度の数なら喜んで受け入れるが、1200人は多過ぎると強調した。

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村の集会所に到着した住民らは、「ピディントンが連合王国(英国)から離脱し、自己決定権を追求することを支持するか」との問いに対し、「賛成票」または「反対票」を投じるための「投票用紙」を受け取った。村人のハーバート・オーウェンさん(76)は、「連合王国からの脱退に投票した」として、政府がピディントンに「関心を払っていない」ように感じられると語った。

「グラウンドゼロ」と語る村の首長

この住民投票は、英国のコメディー映画『ピムリコへのパスポート』(1949年)をオマージュしたものだ。この映画では、ロンドンの小グループが財宝を発見し、独立を宣言することで戦後の配給制やその他の官僚的な規制から免除される様子が描かれている。

ピディントン教区会のティム・マクナリー会長は、「われわれが行っているのは非常に英国的なこと、つまり投票だ」「これはこの地域だけでなく、連合王国全土において極めて重要な問題だからだ。われわれはいわばグラウンドゼロ(変化などの中心地)」と語った。マクナリー氏は、村人の恐れは旧軍用施設に収容されるであろう難民認定申請者の大多数に対するものではないと説明。村人が懸念しているのは、「予測も制御もできない迷惑行為を働く厄介者になるであろうごく少数の個人」だと語り、今回の計画の規模の大きさが「想像を絶する」と付け加えた。

マクナリー氏は「そしてわれわれは、これから起こる事態に対応するために暮らし方を変えざるを得なくなる」として、村には防犯カメラの設置などの防犯対策の導入が進められていると語った。

「村の人口の4倍」、住民は不安を訴える

政府の概要報告書によると、元軍用施設は少なくとも10年間にわたり、独身成人男性の難民認定申請者を収容するために使用される予定だ。概要報告書は難民認定申請者や施設のスタッフ、そして地元住民の「安全と安心」が「何よりも重要」になると強調している。

だが、ピディントン村の住民らは、政府の提案は理想主義で非現実的だと訴えている。ダービーさんは「村には集会場、12世紀に建てられた教会、そして運動場があるだけで、それ以外には何もない」と述べ、独身成人男性の難民認定申請者たちがどのように時間を過ごすのかを疑問視。「(難民認定申請者は)あまりにも多過ぎる。この村の人口の4倍もの人数で、事実上の村の乗っ取りだ。彼らは外に出て(村の中を)あちこちで歩きたがるはずで、それが深刻な問題を引き起こす」と語った。

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村の女性たちは身の危険を感じると訴えている。ピディントン村の女性住民133人は英議会の女性議員266人に宛てた公開書簡で、自分たちは「危機に直面している」と主張。「われわれが知るこれまでの生活は破壊されるだろう。村を歩いていても安全だとは感じられなくなる。われわれはすでに恐怖の中で暮らしている」と訴えた。

安全への懸念と全国的な議論

17歳の高校生で、馬の世話係のアルバイトをしているディタ・ジャクソンさんは、収容計画について「心配だ」と述べ、護身術を習っていると付け加えた。ジャクソンさんは「生まれてからずっとこの村に住んでいるが、とてもではないが安心して外を歩けなくなる」と訴えた。農家のジェニファー・オーウェンさん(76)も「生活が完全に一変してしまうだろう」と付け加えた。

移民問題、特に不法移民問題は近年、大きな政治問題となっており、英国における強硬右派政党の台頭を後押ししている。9月に入ってからも、小型ボートでの不法移民の到着をめぐり、黒い服を着て覆面をした男性たちが南部の二つの港の近くで警察と衝突する事態が発生した。

2024年7月から政権を握る中道左派の与党・労働党は、保守党率いる前政権から引き継いだ難民認定申請者をホテルに収容する政策を段階的に廃止している。労働党は2029年に予定される今期議会の終了までにホテルの使用を完全に終了し、難民認定申請者を元軍用施設などに移すと表明している。アンディ・バーナム首相は先月、難民や難民認定申請者を「最も貧しい村々」だけに押し付けるのは不公平だとの認識を示した。この象徴的な住民投票の結果は、16日朝に発表される予定だ。