2025年の国勢調査を巡り、富山市職員が総務省から統計法違反の疑いで刑事告発された。藤井裕久市長は、市職員の組織的関与を認め、「水増し」は住民基本台帳の人口との差を縮めるために行われたと説明した。しかし、その動機や、関わった職員の規模などについて明らかにせず、市議らから批判の声が上がった。
市長が謝罪、詳細は捜査に委ねる
刑事告発を受け、29日午後、藤井市長は市役所で開かれた議員協議会で釈明に追われた。藤井市長は、刑事告発を受けたことを報告し、「誠に遺憾で、痛恨の極みだ」と謝罪の言葉を述べた。
市議からは、詳細について説明を求める声が上がったが、藤井市長は「今は警察の捜査に協力する」と答えるにとどめた。協議会後、赤星ゆかり市議(共産党)は、「説明は納得いかない。百条委員会を開くなどして、徹底調査を求めたい」と話した。
組織的関与を認めるも理由は不明
議員協議会の後、藤井市長は報道陣の取材に応じた。藤井市長は、「組織ぐるみではないか」との記者の質問に「組織でやっていたと報告を受けている」と、組織的な関与があったと認めた。
一方、人口40万人を維持するために水増しされた可能性について記者から問われると、「それはない」と言下に否定。「特に誰も得をするわけでもなく、そこは今でも疑問だ」とした。
水増しした理由については、「住民基本台帳との開きを少しでも縮めるためにやっていたんじゃないかという報告を受けている」と明らかにしたが、その理由は不明だとし、「捜査の中で明らかになると思う」と述べた。市職員による水増しの具体的な方法や、関わった人数などについては「警察の捜査に関わる」として明らかにしなかった。
地方交付税への影響、専門家の懸念
市財政課によると、26年度の地方交付税は、水増しされた速報値を基に計算され、すでに総額172億8000万円が交付されているという。藤井市長は「(水増しによる)影響は、たぶん数億円だ」と話している。
新田知事は29日、「調査結果に対する信頼はもとより、調査そのものに対する信頼を損なうものと受け止めており、誠に遺憾だ」とするコメントを発表した。
統計に詳しく、国勢調査を人流の研究などで活用している大西宏治・富山大教授(人文地理学)は、「富山市としてのプライドがあり、40万人を割らないように調整したとすれば悪質だ」と話す。
藤井市長によると、水増しは、住民票をまとめた台帳である住民基本台帳の人口と、現地訪問などで把握する国勢調査の人口との差を埋めようとして行われたという。大西教授によると、富山県では大学進学や就職などで県外に出る人は多いが、住民票を富山に残す人もいる。「住民基本台帳の人口より、実在住の数は少なくなるはず」とし、二つの統計のつじつまを合わせる必要性に疑問を感じている。
大西教授の研究では、国勢調査は、最も基本的なデータだという。住民基本台帳と違い、家族構成などの情報から、地域の将来像を予測しやすいためだ。「誤った人口を使って行政が将来像を描き、誤った政策判断をしないか」と懸念した。