太平洋戦争末期、出撃を控えた特攻隊員がピアノを弾くために鳥栖市の学校を訪れたという逸話を約30年にわたって伝えてきた同市の団体「ピアノ『フッペル』と映画『月光の夏』を語り継ぐ会」が、7月にNPO法人化した。理事長に就任した斉藤美代子さん(83)は「たくさんの若者が将来を奪われた痛ましい戦争の記憶と平和活動は、どんなことがあっても残さなければならない」と話している。
特攻隊員とピアノの逸話
ピアノは戦時中、鳥栖国民学校(現鳥栖市立鳥栖小)に置かれており、1945年の終戦間際に音楽学校出身者の特攻隊員2人が学校を訪れ、ベートーベンのピアノソナタ「月光」などを奏でた。ピアノは現在、サンメッセ鳥栖で常設展示されている。
斉藤さんは40歳代の頃、国民学校の音楽教師として特攻隊員の演奏に立ち会った上野歌子さん(故人)から「ピアノを残したい」という思いを聞き、一緒に保存運動を始めた。取り組みの一つとして映画化の支援にも尽力。93年に公開された映画「月光の夏」は160万人以上を動員するヒット作品となった。
NPO法人化の経緯と今後の活動
その後、任意団体の「語り継ぐ会」を作り、ピアノを製造したフッペル社があったドイツ・ツァイツ市と鳥栖市との交流促進に尽力。終戦の日に市などが主催するピアノコンサートや映画上映会の運営に協力してきた。
戦後81年が過ぎて当時を知る人が少なくなる中、世代が替わっても活動をつないでいくためにNPO法人化を決めた。公的な組織にすることで、有志の活動から社会全体で戦争の記憶を語り継いでいく動きへと発展させられると判断し、斉藤さんら有志の約10人が7月13日に設立。若者や子どもたちに戦争の記憶の継承や平和を祈る活動への参加を呼びかけていく。
8月28日に斉藤さんらが市役所で記者会見した。今後の活動として、国内外の人が参加できる平和スピーチコンテストの開催や、収集資料と語り継ぐ会の活動実績を紹介する展示会場の確保、知覧特攻平和会館(鹿児島県南九州市)などの施設との交流に取り組む方針を明らかにした。
斉藤さんによると、映画にエキストラとして出演した子どもたちが語り継ぐ会に加わっているといい、「幅広い世代に参加を呼びかけ、戦争を経験した人たちから託された平和への思いを未来へつなぐ方法をみんなで考えたい」と語った。



