バンド楽曲を聞いて作った楽譜の模倣版をウェブサイトに無断公開されて損害を受けたとして、楽譜出版社がサイト運営会社を訴えた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷は9日、被告側に約1億6900万円の賠償を命じた。三浦守裁判長は「模倣版の無断公開は、自由競争の範囲を逸脱して営業を妨害し、不法行為が成立する」と述べた。
初の最高裁判決
楽譜のように著作権法で保護されない制作物の無断利用を巡り、最高裁が民法上の不法行為にあたると判断したのは初めてで、裁判官4人全員一致の意見。賠償を命じた2審・東京高裁判決を支持して被告側の上告を棄却し、原告側の勝訴が確定した。1審・東京地裁判決は、楽譜の模倣を否定し、原告側の請求を棄却していた。
原告の主張と被告の行為
原告は楽譜出版社「フェアリー」(東京)。日本音楽著作権協会(JASRAC)の許諾を得て、音源から聞き起こしたバンド楽曲の楽譜を販売してきた。ところが、同社から楽譜を購入したサイト運営会社「GLNET」(東京)が2011年12月~18年6月、模倣版をウェブ上に公開して広告収入を得たため、売り上げが激減。訴訟を起こし、5億円の賠償を求めた。
判決のポイントと影響
最高裁判決は、制作物の安易なただ乗り(フリーライド)は許されず、悪質な場合は、著作物ではなくても賠償責任が生じうることを明確に示した。生成AI(人工知能)の登場によって、誰しもが文章から画像まで作り出すことができ、制作物の模倣が容易となっている中、作り手の権利を保護する道筋を開いたと評価できる。生成AIを巡っては近年、作り手側が権利侵害を訴えて提訴する動きが広がっており、作り手の保護を重視した判決は、こうした訴訟に一定の影響を与えるとみられる。