被差別部落を特定する内容のウェブ記事で「差別されない権利」を侵害されたとして、埼玉県熊谷市の男性と部落解放同盟埼玉県連合会が出版社代表の男性に対し、記事28件の削除などを求めた訴訟の控訴審判決が7日、東京高裁(林俊之裁判長)であった。高裁は、一審・さいたま地裁判決を支持し、全28件の削除と11万円の賠償を被告男性に命じた。
高裁の判断
被告の男性はサイトで、埼玉県内の被差別部落を訪問したとする記事で具体的な地名を挙げ、地域の写真を掲載してきた。
高裁は一審判決と同様に、原告の男性の「不当な差別を受けることなく平穏な生活を送ることができる人格的な利益」や、プライバシーが侵害されたと判断。被害回復の実効性を確保するため、埼玉県内の被差別部落に関する記事28件すべての削除などを命じた。
部落差別をめぐる経緯
部落差別をめぐっては、16年に部落差別解消推進法が制定された。埼玉県では22年に部落差別解消推進条例が定められたが、いずれも差別行為に対する罰則規定は盛り込まれていない。
被告の男性は16年、被差別部落の地名や世帯数を記した戦前の報告書「全国部落調査」を復刻販売すると告知し、ウェブサイトにも地名リストなどを載せた。これに対して、部落解放同盟と被差別部落の出身者らが提訴。23年の東京高裁判決は「不当な差別を受けることなく、人間としての尊厳を保ちつつ平穏に生活を送ることができる人格的利益」を法的保護の対象として認め、一部の出版禁止や計550万円の賠償などを被告側に命じた。その後、最高裁で確定した。
被告のその後の活動
被告の男性は、25年の川崎市長選に「ヘイトスピード禁止条例の廃止」を掲げて立候補し、落選している。