大阪市で平成21年7月に5人が死亡したパチンコ店放火事件で死刑が確定し、21日に刑を執行された高見素直(すなお)死刑囚(58)。事件の公判は、弁護側が刑事責任能力を争うとともに、「絞首刑は残虐だ」として死刑制度の違憲性を訴える異例の展開をたどった。
公判で明らかになった動機
《事件の約10年前に、超能力者の女性の声が聞こえるようになってから、この女性や背後にいる集団から嫌がらせを受けた。将来生活に行き詰まれば、復讐(ふくしゅう)のために大量無差別殺人をしようと思っていた》
公判で明らかになったのは、高見死刑囚がこんな思いで日々の生活を送り、ついに実行に踏み切った経緯だった。23年9月の裁判員裁判の初公判で高見死刑囚は起訴内容を認めたが、弁護側はこうした動機を念頭に「妄想が引き起こした犯罪で、被告の責任能力は限定的だった」と主張した。
死刑制度の違憲性も争点に
結果の重大性から検察側による死刑求刑が見込まれる中で、弁護側がもう一つ争点化したのが死刑制度それ自体の違憲性だった。「絞首刑による死刑は残虐な刑罰を禁じた憲法に違反する」と訴えたのだ。
2つの争点を中心に2カ月間審理が行われ、大阪地裁は同年10月、求刑通り死刑を宣告。判決は、被告が過去に覚醒剤を使用してから「誰かに見られている」という感覚にとらわれるようになったと指摘。女性の幻の声が聞こえるようになって以降、体の不調や不都合な状況を女性らと結びつけ、「嫌がらせ」と思い込むようになったとした。
判決の判断
こうした事情から、判決は精神疾患の影響を認める一方で、放火殺人の実行にあたっては「確実に多数の人を殺す」ため主体的に行動したと認定。被告が事件当時、「完全責任能力を有していた」と判断した。
絞首刑が残虐だとした弁護側の主張については、絞首刑が最善の方法かどうかは議論があるところだと述べつつも「死刑に処せられる者は執行に伴う多少の精神的・肉体的苦痛は当然甘受すべきだ」と退けた。



