民泊を巡り、地域住民とのトラブルが全国で増加している。こうした事態を受けて、観光庁は7月に住宅地の居住環境が損なわれる場合には、条例でその地域の営業を禁止できると自治体に通知した。
住民生活を守るための規制強化
観光産業は日本経済の発展に重要だが、そのために住民の生活が犠牲になるのでは本末転倒だ。住民生活を守るために、自治体が営業規制を強化することはやむを得まい。地域の実情に応じた営業規制を導入し、住民が安心して暮らせる環境維持に努めてもらいたい。
民泊は、旅行者らの宿泊先として戸建て住宅やマンションの空き部屋を有料で提供する。訪日客の受け皿としても期待されている。一方で、宿泊客による騒音やごみ捨てなどの苦情が増え続けている。
新宿区の苦情件数が急増
全国最多の民泊施設を抱える東京都新宿区では、宿泊者による騒音やごみ捨てなど民泊に関する苦情件数が令和3年度の82件から7年度には1334件に急増している。このため、新宿区では住宅地や学校周辺での民泊の営業を原則禁止する規制強化策を導入することを決めた。関連条例を改正し、9年6月の施行を目指している。
吉住健一新宿区長は会見で「業界が自ら招いた事態だ」と述べた。事業者は重く受け止めなければならない。
規制の内容と他地域への広がり
新宿区は新規の開設だけでなく、既存施設も営業禁止の対象とする。ただ、家主が同居して適切な運営ができるなどの要件を満たせば、例外的に営業を認める。一方、年間180日を上限としている商業地域の営業も120日に制限する。既存施設については2年間の経過措置を設ける。
民泊の営業を規制しようとする動きは新宿区以外にも広がっている。都内では台東区が来年1月から住居専用地域などでの新規開業を禁止するほか、訪日客に人気の京都市も同様の規制強化策を検討している。
自治体が規制を強化することで、無届けの「ヤミ民泊」の利用者が増加する懸念もあり、その対策も求められる。地域住民の理解を得られず、迷惑施設との認識がさらに広がれば、いずれ民泊は立ち行かなくなろう。観光立国の一翼を担う施設として民泊を位置付けるのであれば、政府も抜本的な制度見直しを検討すべきだ。