熊本地震の避難所にTKB完備の民間支援、48時間以内の開設目指す
熊本地震の避難所にTKB完備の民間支援、48時間以内の開設目指す

熊本地震の被災地で、避難所開設・運営を支援するスタートアップ「シェルターワン」(東京都)が、発災から48時間以内にTKB(トイレ、キッチン、ベッド)とインフラを備えた避難所を開設する構想を掲げている。今年5月の訓練では約30時間で生活環境一式の立ち上げを完了し、参加者の約9割が高く評価した。

10年前と変わらない被災地の光景

7月30日、2日前に起きた熊本地震の被災地に入った児島功さん(46)が見た光景は、10年前に報道で見た平成28年熊本地震と「全く変わっていなかった」。体育館での雑魚寝や、集積所に滞留して必要とする被災者に届かない支援物資など、課題は解消されていない。

児島さんは被災自治体に無償支援を申し出たが、複数の自治体が「間に合ってます」と拒否した。「現状は『支援99対受援1』。支援を受ける側が受け止めきれないのは当然です」と話す。

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訓練で築いた信頼と民間の現場力

5月に県境を越えた大規模訓練を実施していた熊本市からは支援を要請され、お盆前にシャワーユニットを3つの拠点避難所に設置した。訓練を通じて構築された信頼関係や、地元企業・団体とのつながりが生きた。歩行器を使う被災者のためスロープを整備し、電源設備や給排水パイプも現場に合わせて設置した。

設置後、最初に利用した男性が地方局のインタビューに「気持ちよかった~」と笑顔を見せた姿に、児島さんは感無量だったという。「この笑顔を守るために、絶対妥協してはいけない。その連続が、災害関連死ゼロにつながるはずです」と語る。

「餅は餅屋」の力で避難所を社会的共通資本に

清水建設出身の児島さんは長年、建設現場の施工管理に従事してきた。現場の仮設施設は機能的で低コスト、迅速設置・撤去が当たり前で、備蓄倉庫の確保や資材調達も得意分野だ。民間のこうした「餅は餅屋」を持ち寄れば、災害時の避難所問題を解決できるのではと考え、昨年4月に起業した。

昨年は長野や佐賀、神奈川など全国4カ所で自治体や地元団体と実証実験を実施し、広域支援を伴うTKB避難所の有効性はいずれも高く評価された。今年5月、「熊本地震10年事業」として熊本市主催で4日間行った実動訓練には、36自治体に35の企業団体や災害支援団体、宿泊訓練に参加する市民など計約150人が参加した。避難用シェルターは愛知、シャワーユニットは大阪、寝具や備品は佐賀から輸送され、協力企業の専門技能者による設営・運用チームが「発災」から約30時間で立ち上げを完了した。

公助の限界と防災庁への期待

災害対策基本法や災害救助法は、被災者支援を市町村の責務と定めるが、人口減少と少子高齢化が進む今、地方こそ「公助の限界」が懸念され、「受援力」向上は容易ではない。児島さんが訪ねたある避難所では、各地から駆け付けたトイレカーが5、6台並んでいたが、使う人は皆無だった。空調がないため中は灼熱で「1分もいられない」からだ。隣接市の避難所では支援物資のスポットクーラーが「電源がない」と放置されていた。

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それでも児島さんは「10年以内に全国でやれる」と構想を語る。TKB避難所をユニット単位で機動的にし、広域での資機材調達と現場運営を統合運用するITプラットフォームを開発。自治体や企業・団体を束ねた広域連携の仕組みを作り、避難所を「自治体が単独で開設する施設」ではなく、社会的共通資本のシステムとして制度化するという。11月にも発足する防災庁は資機材整備などを計画するが、どう展開するのかは見通せていない。「日本の民間リソースは大きく、活用できれば世界一の防災力になる」と児島さんは言い、広域連携による訓練の継続を重視する。防災庁が幅広い官民連携の接着点となり、持続的な訓練の先頭に立つことを期待している。