大阪市此花区のパチンコ店でガソリンをまいて火を放ち、無差別殺傷事件を起こした高見素直死刑囚(58)の刑が21日、執行された。事件から17年。大切な家族を奪われた被害者遺族は深い悲しみを抱え、執行に複雑な表情を見せた。
遺族「気持ちの整理はつかない」
「なぜ妻が殺されないといけなかったんだという思いは消えない。(死刑が執行されても)気持ちの整理はつかない」。事件で妻のヤエノさん(当時62歳)を亡くした高巣清治さん(78)(大阪市)は読売新聞の取材にそう語った。
夫婦そろってパチンコが趣味。週末は一緒によく出かけた。あの日、清治さんは別の用事があり、ヤエノさんだけが事件に巻き込まれた。
清治さんは執行をテレビのニュースで知り、驚いた。「敵(かたき)が討たれたわけだが、うれしくはない。妻と一緒に子どもや孫の成長を見られないのは寂しい」と話した。
裁判の経緯と死刑囚の言動
高見死刑囚は2011年9~10月に開かれた1審・大阪地裁の裁判員裁判で起訴事実を認めた。弁護側は、刑事責任能力の程度や、「絞首刑は、残虐な刑罰を禁じる憲法に違反する」と争った。同10月の1審判決は、高見死刑囚が精神疾患による妄想をきっかけに無差別殺人を計画したと指摘。一方で、犯行時に妄想の影響はなかったとして完全責任能力を認定した。絞首刑の合憲性も認めた。
補充裁判員を務めた50歳代の男性会社員は取材に、公判中の高見死刑囚について「無表情で、審理に無関心だった。自分の罪が重くなるかどうか気にしていなさそうだった」と振り返った。死刑執行に関しては「高裁、最高裁でも、職業裁判官が判断したこと。私自身が精神的に負担を感じることはない」と述べた。
弁護人を務めた後藤貞人弁護士(大阪弁護士会)は16年に死刑が確定した後、1、2年は面会をしていたといい、「再審請求について説明したが関心を示さなかった。妄想があり、違う世界にいるようだった。執行には慎重な判断が必要だったのではないか」と批判した。
高見死刑囚は1審の被告人質問で「死刑になるのは当然。怖くない」「今は生きることに執着していない」と発言。「亡くなり、けがをされた方には申し訳ない」とも語っていた。
関係者の受け止めと執行の決定
高見死刑囚が勤めていた職場で同僚だった男性(54)は取材に「死刑執行を知り、悲しさもあるが、起こした事件の大きさを考えると、仕方ないとも思う」と話した。
平口法相は執行後の記者会見で、18日に執行命令書に署名したと明かした上で、「残虐な犯行で社会に衝撃と恐怖感を与えた。慎重な検討を加え、執行を命じた」と述べた。



