北朝鮮政府を相手に損害賠償を求めて勝訴した脱北者ら4人が8月31日、北朝鮮政府の財産を差し押さえて現金化するため、海上保安資料館横浜館(横浜市中区)に展示されている「工作船」などの差し押さえを横浜地裁に申し立てた。
「帰国事業」の責任を問う裁判
この裁判は「北朝鮮は地上の楽園」との宣伝を受けて在日朝鮮人らが移住したが、実際は過酷な生活を強いられた「北朝鮮帰国事業」の責任を問うたもの。今年1月、東京地裁判決が北朝鮮政府に8800万円の賠償を命じ、その後に確定した。
工作船は2001年、鹿児島県奄美大島沖で海上保安庁の巡視船と銃撃戦を繰り広げた末に沈没したもの。海底から引き揚げられ、現在は横浜赤レンガ倉庫の近くにある同館で保管されている。
差し押さえの仕組みと課題
原告側は、工作船の所有権をもつ北朝鮮政府は、船を占有する海保への返還請求権もあると主張。この返還請求権を差し押さえて船を競売にかけることをめざす。ただ、実際に買い手が現れて現金化できるかは不明だ。
原告代理人の福田健治弁護士は取材に「前例がなく実現可能性は未知数だが、北朝鮮政府に人権侵害の責任をきちんと取らせることは重要な課題だ」と申し立ての意義を語る。原告の川崎栄子さん(85)は、北朝鮮に家族12人を残してきたといい「彼らに会えないで死ぬことはあり得ない。(現金化できれば)再会のための活動費に充てたい」と話した。
帰国事業の歴史と判決内容
帰国事業では1959~84年に在日朝鮮人ら約9万3千人が渡航。過酷な生活を強いられ、自由な出国が許されなかった。原告らは60~72年に渡航し、2001~03年に脱北した。
1月の地裁判決は、原告らが帰国事業で「人生の大半を奪われた」と指摘。1人当たり2200万円の賠償を北朝鮮政府に命じる内容が確定した。訴訟に北朝鮮政府は出廷せず、主張の書面も出さなかった。



