水戸市内のアパートで3年前、自身の子ども2人を刺殺したとして殺人罪に問われた母親の被告(42)の裁判員裁判の被告人質問が15日、水戸地裁で行われた。被告は精神的に病んでいった原因を職場への不満と語った一方、殺害したとされる当時の状況については「覚えていない」と繰り返した。
体調悪化と職場のストレス
被告が食欲不振など体調悪化を感じたのは2023年6月末ごろ。弁護側の被告人質問では「コロナの時期に(飲食店でパートとして)勤め始め、蓄積した疲れが関係しているのかなと思いました」と述べた。この時期、1カ月ほどで3、4キロやせたという。
飲食店では土日も出勤を求められ、定食からビュッフェ形式に変わると知らされた。職場のミーティングで過呼吸になることもあったという。7月中旬には布団に入っても一睡もできない日があり、「鏡を見ると頰が落ち、笑えなくなりました」と語った。
殺害当時の記憶と検察側の指摘
被告は小学3年の長男(当時8)と保育園児の長女(当時5)を殺害した罪に問われている。この記憶はないが、キッチンから包丁を取った場面と自ら110番通報した場面は覚えていると明かした。「息をしていない長女と長男をみて、はやくどうにかしなきゃと思った」と説明し、「『助けてほしい』と思い、そのとき死のうとは思っていない」と答えた。
検察側は初公判で、被告が心因性うつ病にかかっていたと指摘している。検察側からは、スマートフォンで「綺麗な死に方」などと検索し、自殺を考えたのかを問われると、被告は「わからないです」と答えた。7月23日の事件直前に元交際相手に連絡し、「子どもを殺して死ぬしかない」と伝えたとされるが、「記憶にないです」と述べた。
友人による証言と被告の心情
被告は不妊治療の末に長男を出産。長女も生まれ、「子育てはかわいさの方が強く、大変だと思ったことはありません」と語った。長男は「とても優しく、妹にも優しく、できる子」、長女は「私の側から離れることはなく、ずっと一緒にいた記憶がある」と述べた。
証人尋問では、被告の友人も証言台に立った。亡くなった長女が通った保育園で知り合い、事件直前の23年7月22日、被告の家族を自宅に招き、被告と2人で話し込んだ。被告のスマホが見え、検索履歴に「綺麗な死に方」とあったため、「死ぬのはダメだよ」と諭したという。すぐ精神科病院の予約を試みたが、「1カ月待ちで予約できなかった」。
友人は被告が社会復帰したら支えると語ったうえで「ちゃんと罪を償って頑張って生きてほしい」と言うと、被告は目からあふれた涙をふいていた。
起訴状などによると、被告は23年7月23日午後11時55分~翌24日午前6時半ごろ、自宅アパートで、就寝していた長男と長女の首を包丁で突き刺して殺害したとされる。