失踪の理由は借金返済の悩み…「ホンマの家族になれてへん」と牧師
失踪の理由は借金返済の悩み…牧師「ホンマの家族になれてへん」

メダデ教会の牧師、西田好子さん(69)は、失踪していたフクジュさん(59)が2週間ぶりに見つかり、借金返済の悩みが原因だったと知った。しかし「ホンマの家族にはなれてへん」と、信徒との絆へのわだかまりは消えない。

失踪から2週間、牧師は憔悴

フクジュさんが消えて2週間が過ぎた。西田さんは憔悴し、フクジュさんからの電話が鳴る幻聴が聞こえ、ほとんど眠れない状態だった。警察からは、アパートの防犯カメラにリュックを背負って出て行く姿が映っていたと連絡があった。

西田さんの脳裏には4年前の出来事がよぎった。当時、一人の信徒に期待をかけていた。暴力団を飛び出した30歳代の男性で、組関係者に殴られて片目が失明し、全身の入れ墨を長袖で隠していた。「小学校もちゃんと通ってないから、勉強したいんです」という言葉に、牧師になる前は教師だった西田さんは「燃えた」。しかし1か月後、彼は生活保護を受け取ったその足で姿を消した。

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大阪の商店街で再会

9月17日、記者は取材後、大阪メトロの動物園前駅から堺筋線に乗り、南森町駅で降りた。夕暮れの天神橋筋商店街を歩いていると、頭をそり上げた男性の背中が目に入った。よれよれのシャツに膨らんだリュックを背負い、とぼとぼ歩く姿はフクジュさんだった。

「フクジュさん、ですか?」と肩をたたくと、フクジュさんは体を震わせて振り返り、記者を見て立ちすくんだ。西田さんたちが懸命に捜していることを伝えると、フクジュさんは人目もはばからず泣き出し、「先生にあわせる顔がありません」と頭を抱えた。その後、西田さんに電話をかけ、「西成に帰ります」と言った。

借金返済の悩みが失踪の原因

アパートの前で待っていた西田さんに、フクジュさんは「すみません、すみません」と繰り返し、あの日の出来事を語り始めた。

8月31日、フクジュさんは梅田での清掃の仕事を終え、公園を歩いていたところを、昔金を貸してくれた男性に呼び止められた。「昔、金貸してたやろ。返してもらえるか」と言われた。ずっと昔、野宿していたフクジュさんに同情して4万円を貸してくれた男性だった。フクジュさんはアパートに帰り、謝罪して金を返済した。

その後、自室で西田さんの失望した顔が浮かんだ。西田さんは説教で「借金はアカンけど、踏み倒すのはもっとアカン。大罪やで」と言っていた。6年間、教えを忠実に守ってきたフクジュさんは、自分の行為が「大罪」に思えた。「先生にどう告白すればいいのか……」と考えるのが苦しくなり、衝動的に部屋を出た。

路上生活を経て教会へ

フクジュさんは神戸・新開地の安宿に泊まり、携帯電話の電源を切った。所持金は宿代で減り、数日で大阪に戻り、6年ぶりに野宿した。図書館で時間を潰し、ガード下で息を潜め、百円均一の店のパンで空腹をしのいだ。「生活保護を取りませんか」と声をかけられたが、貧困ビジネスだと直感した。

携帯電話の電源を入れると、びっしり着信が入っていた。フクジュさんは「今さら帰れない」と膝を抱えて泣いた。しかし、西田さんに失踪のいきさつを聞いた西田さんは「ちゃんと金返して、過去が清算できた。良かったやないか」と拍子抜けした。信徒たちは涙を流して喜び、職場の仲間も温かく迎え入れた。

フクジュさんは「失った信用を取り戻します」と誓い、以前にも増して働いた。しかし西田さんは「メダデ教会は、まだまだや。ホンマの家族にはなれてへん」と、信徒たちが自らつながりを断ち切ろうとするわだかまりが消えなかった。

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