強度行動障害の受刑者向け「心静める部屋」、府中刑務所に試験導入へ
強度行動障害の受刑者向け「心静める部屋」、府中刑務所に試験導入へ

法務省は来年度、自分や他人を傷つける「強度行動障害」のある受刑者らを対象に、特性に応じた処遇を試験的に行う。府中刑務所(東京)に気持ちを落ち着かせるための部屋を整備し、刑務官が専門家の研修を受けて対応に当たる。

改正刑法を踏まえた新たな取り組み

更生や再犯防止を重視した改正刑法が昨年6月に施行され、受刑者の年齢や特性に応じた処遇を実施できるようになった。これを踏まえた新たな取り組みで、同省は効果を確認できれば、他の刑務所でも取り入れたい考えだ。

刑事収容施設法は、受刑者が自身や他人を傷つけたり、施設の設備などを壊したりする恐れがある場合、所長の命令で保護室に収容できるとしている。ただ、暴れる受刑者を収容する際に騒動になって、受刑者や刑務官がけがをすることが懸念される。保護室には自傷や破損を防ぐために備品はほぼなく、収容期間中、通常の作業や更生のための教育プログラムを受けられない。社会復帰に支障が出る恐れがあるほか、監視が常時必要なため、現場の負担も大きい。

カームダウンスペースの設置と効果検証

こうした課題を改善しようと、府中刑務所に来年度、精神科医の監修の下、防音や遮光を施した部屋を複数、設置する。受刑者に興奮の兆しが見られたら、刑務官がこの部屋への入室を促し、保護室での収容よりも早く通常の処遇に戻すことを目指す。

刑務官は、精神科医や福祉関係者などの専門家から講習を受け、強度行動障害への理解を深める。受刑者の気分を落ち着かせるために音楽を流したり壁の色を変えたり、複数のパターンを用意して、効果的な仕様を検討する。

同様の効果が期待される部屋は「カームダウンスペース」といわれ、近年、空港や学校などで設置する動きが広がっている。昨年の大阪・関西万博でも複数設けられた。

法務省幹部は「受刑者の特性に応じて周囲の環境を工夫することで、問題行動を未然に防ぎたい。更生に向けて必要な教育やプログラムを切れ目なく受けさせて、円滑な社会復帰につなげたい」と話す。

◆ 強度行動障害=厚生労働省によると、自分や他人を傷つけたり、物を壊したりといった激しい行動を頻繁に起こす状態を指す。生まれつきの障害ではなく、光や音など外部の刺激や、先が見通せないことへの不安や緊張などが引き金になるとされる。