6月19日、東京都北区の区立滝野川第三小学校で発生した火災は、音楽準備室から出火した。特定非営利活動法人日本こどもの安全教育総合研究所理事長の宮田美恵子氏は、この火災を「人災」と指摘し、組織の危機管理意識の低さが根本原因だと分析する。
音楽準備室の危険な実態
音楽準備室は狭く、楽器が所狭しと置かれ、身動きが取りにくい状態だった。楽器は乾燥を嫌う性質があるにもかかわらず、暖房器具と同室で保管されていたことは不自然極まりない。さらに、この部屋で洗濯物を乾かすために暖房器具を使用していた可能性も指摘されている。乾燥厳禁の楽器が並ぶ部屋で暖房器具を使うことは、安全配慮の観点から考えられず、危機管理の欠如と言わざるを得ない。
人目につかない場所の危険
準備室は人目につきにくく、管理職が日常的に立ち入る機会も少ない。だからこそ、定期的な安全点検と改善が不可欠であったはずだ。学校の安全管理は、危険が顕在化しやすい場所だけを点検すればよいわけではない。むしろ、今回のように「人目につかない場所」にこそ危険が潜む。音楽準備室は、理科室や家庭科室ほど火気を使わないため、点検の優先度が低くなりがちだが、火気を使わない部屋であっても、暖房器具や電子機器が持ち込まれれば火災リスクは一気に高まる。学校の安全管理は「用途」ではなく「実態」を見るべきであり、この視点が欠けていたことが今回の火災の根底にある。
避難判断は妥当だったが、備えの不足は否めない
火災発生時、廊下には煙が充満し、児童は廊下を使った避難が困難になった。教員は窓から外のひさしへ児童を誘導し、結果としてけが人なく避難を完了した。この判断は、廊下が使えない状況ではやむを得ず、迅速な決断を評価すべき場面である。煙の流入速度、児童の年齢、教室の位置関係を踏まえれば、ひさしへの避難は最適解であったといえる。しかし、ひさしが複数の児童の重みに耐えられる構造だったか、転落の危険性はないかといった点は、事前に点検されていたとは言い難い。もし転落の危険があれば、下に緩衝材を置くなどの対応が必要だが、そうした安全確保の準備だけでなく、教員の中には救助袋の使い方を知らない人もいたとされ、避難器具の扱いが共有されていなかったことは重大な問題だ。
「どこで出火してもイメージできるか」が危機管理の本質
宮田氏は、「どこで出火してもイメージできるか」が危機管理の本質だと指摘する。学校は、すべての教室や準備室で火災が発生する可能性を想定し、それぞれに応じた避難計画を策定すべきである。今回の火災では、音楽準備室という想定外の場所からの出火に対応できなかったことが明らかになった。今後は、定期的な避難訓練の実施に加え、教員全員が避難器具の使用方法を習得し、建物の構造上の弱点を把握することが求められる。また、保護者や地域住民との連携も重要で、災害時の情報共有や避難支援の体制を整える必要がある。
学校の安全管理は、一度点検すれば終わりではない。常に実態を把握し、改善を続けることが重要だ。今回の火災を教訓に、全国の学校で安全点検の見直しが進むことが期待される。



