刑事事件で任意の取り調べを受ける人に対し、弁護士が取調室の外で待機して助言する「準立ち会い」が広がっている。捜査機関の取り調べが問題となるケースが後を絶たない中、不当な取り調べや冤罪を防ぐため、福岡や沖縄など各地の弁護士会は、経済的支援や研修を通して取り組みを後押ししている。
飲酒量の記載を巡り弁護士が抗議
福岡県内のある警察署の取調室から出てきた女性(30歳代)は、室外で待機していた弁護士に「話していない内容を調書に書かれた」と困惑した表情で訴えた。
弁護士によると、女性は今年、飲酒運転で逮捕された。この日は釈放後に行われた任意の取り調べで、容疑を認めたが、飲酒量を正確に覚えていなかった。しかし、取調官から「(検知したアルコールの)計算式からこれくらい飲んだことになる」などと言われ、供述調書に飲酒量が記入されたという。
この日、取調室の外で待機する準立ち会いを行っていた弁護士は、女性から相談を受け、「話していないことは記載できないですよ」と取調官に抗議した。酒量の記載は削除され、女性はその後、不起訴処分となった。同署幹部は取材に対し、「個別の事案に答えられないが、証拠に基づいた適正な取り調べを行っている」としている。
「立ち会い」認めた例はほとんどなく
日本弁護士連合会は、米国や英国、韓国などで認められている弁護士が取り調べに同席する「立ち会い」の実現を目指している。ただ、これまで少年や精神障害者ら一部を除き、捜査機関側が認めた例はほとんどない。国内では立ち会いの可否を明確に定めた法律はなく、捜査機関側にはむしろ真相解明に支障を来すとの懸念があるからだ。
そこで、広がっているのが準立ち会いだ。取調室外の廊下などで弁護士が待機し、取り調べの休憩時に内容を聞き取り、対応を助言する。
日弁連「取調べ立会い実現委員会」の川崎拓也事務局長によると、準立ち会いは2018年頃から増え始め、22年12月~今年6月に約140件の実施報告があったという。実施した弁護士からは「(容疑者の)不安が和らいだ」「取調官の対応が良くなった」などの感想が寄せられている。
各地の弁護士会が動き活発化
日弁連は取り組みを進めるため、24年度に援助制度を設けた。国選弁護事件などを対象に、準立ち会いを行った場合には1万5000円、立ち会いの書面による申し出には3000円を支援する。川崎事務局長は「弁護士の立ち会いは国際的には権利として確立している。援助制度をきっかけに取り組みが広がれば」と語る。
各地の弁護士会も、立ち会いや準立ち会いの実現に向けた動きを活発化させている。福岡県弁護士会は23年に立ち会いの制度化を目指すプロジェクトチーム(PT)を発足させ、日弁連の支援制度に上乗せする形で準立ち会いをした場合に2万円を支援するなどしている。沖縄弁護士会は日弁連から講師を招くなどして研修を実施し、宮崎や大分の各弁護士会でも研修を通じて取り組みを推奨するなどしている。ただ、数時間に及ぶこともある取り調べに対応する負担は重く、取り組む弁護士は一部に限られている側面もある。
沖縄弁護士会の金高望会長は「準立ち会いを求めて捜査側と対話することで、取り調べ時間の短縮にもつながっている。丁寧に意義を説明していきたい」と話し、福岡県弁護士会のPT座長を務める古賀祥多弁護士は「取り組みを進め、取り調べのあり方自体にも問題提起していきたい」と語った。



