京都府警と金融機関が連携し、口座情報を即時共有する独自システム「京都モデル」が、特殊詐欺被害の防止に成果を上げている。昨年12月の導入以降、振込先や移転先として利用された口座を70件以上凍結し、被害金の出金を防いだだけでなく、被害金の流れを早期に特定して容疑者摘発につながった事例もある。今年6月からは警察庁も同様の取り組みを始めている。
副業詐欺で即時凍結、出金を防止
今年1月、府警に「副業の準備金名目で数百万円を送金してしまった」との相談があった。容疑者側は被害金を楽天銀行やSBI新生銀行などの4口座に分散していたが、京都モデルに加わっていた両行は、府警の連絡を受け、その日のうちに被害金の移転情報を提供。口座も即座に凍結し、出金をすべて防ぐことができた。
京都モデルは、SBI新生銀行からの働きかけがきっかけで昨年12月に誕生した。独自で対策をしても、他の金融機関の口座が悪用されれば特殊詐欺被害の広がりは抑止できず、同行の山本好昭・金融情報管理室業務推進役は「一金融機関では限界があると感じていた」と話す。
参加団体は25に拡大、迅速な情報共有が特徴
同行など府警と協定書を結んだ10行が参加して始まり、現在は信用金庫や農協なども加わって25団体にまで増えている。京都モデルの最大の特徴は、連絡・対応の迅速性にある。
それ以前も府警と金融機関は特殊詐欺を巡る情報の共有をしていたが、書面でのやり取りが中心で、問い合わせから回答まで数日~数週間かかる場合もあったという。だまし取った金を次々と移動させる容疑者側と対抗するには、迅速な被害金の動きの把握と口座凍結が不可欠だった。
ATM情報で摘発に結び付く事例も
京都モデルでは、府警は口座の不正利用を覚知すると、すぐに電話やメールで当該口座の情報を照会。金融機関側はオンラインで口座名義人や被害金の移転先などの情報を即座に府警に提供し、口座も凍結する。
口座の情報は、府警から京都モデルに参加している他の金融機関にも共有される。情報を受けた金融機関側は自行の顧客が当該口座に送金していた場合には警察に通報し、被害拡大の防止につなげる。
府警が最初に照会した段階ですでに被害金が引き出されているケースもあるが、金融機関側からは現金自動預け払い機(ATM)などの出金場所に関する情報も提供する。京都モデルの導入以降、100件以上で出金場所の迅速な把握や証拠収集をし、摘発に至った事例もある。
府警は6月、特殊詐欺の現金引き出し役の「出し子」とみられる男(25)を詐欺、窃盗の両容疑で逮捕した。被害金の振込先が京都モデルの参加銀行で、長野県のコンビニのATMから出金されたとの情報が府警に提供された。府警はATMの防犯カメラ映像を保存期間が経過する前に入手し、男を特定することができた。
警察庁も同様の取り組みを開始
一方、警察庁も今年5月に送金記録のオンライン照会を始める協定を大手9銀行と結び、6月から全国の都道府県警は警察庁を介して迅速に口座照会をできるようになっている。
警察庁によると、今年1~6月に全国で認知した特殊詐欺被害は2万2031件(暫定値)で、前年同期比の約1・2倍、被害額は約1816億円(同)で約1・5倍に増えた。1日あたり約10億円の被害が出ており、被害金を口座に入金させる「振り込み型」が5割以上を占めたという。
京都モデルには地元に密着した金融機関が数多く参加し、京都府警は大手銀行が加わる警察庁の取り組みと合わせ、より多くの被害防止を目指す。府警の小野雄司・特殊詐欺対策室長は「特殊詐欺に対抗するには金融機関の協力は不可欠。さらなる迅速化を図っていきたい」と話している。