東京・歌舞伎町の雑居ビルで44人が死亡した火災から、9月1日で25年になる。被害を拡大させたのは、ビルに一つだけの階段に置かれた大量の「物」だったとされる。その後、教訓は生かされているのか。
火災の概要と被害拡大の要因
火災は2001年9月1日未明、マージャンゲーム店や飲食店が入る雑居ビルで起きた。何者かが3階のエレベーターホール付近に放火した可能性があるとして、警視庁は捜査をしてきたが、未解決のままだ。
この雑居ビルの避難経路となるはずだった2階から5階(屋上)の内階段にはゴミ袋や衣類、看板など大量の物品が置かれた。これらが燃えるなどして一酸化炭素を含む有毒ガスが発生したが、ビル内にいた人たちの逃げ道をふさいだ。物は防火戸が閉まるのも妨げ、煙や有毒ガスが建物内に充満し、3、4階にいた44人が犠牲になった。
規制強化とその後も続く火災
火災後、地下や3階以上に飲食店など不特定多数が出入りする施設が入り、階段が一つしかない建物は、消防法上の「特定一階段等防火対象物(特一)」として規制が強化された。煙の感知器を通常より多く設置することなども求められる。
それでも、同じように逃げ道が限定されている建物では重大な火災が起きている。21年に大阪市北区のクリニックで26人が死亡した放火殺人事件も、現場は特一だった。
事件後、全国で各消防本部が「特一」を対象に緊急点検を実施し、22年1月末までに3万1967棟のうち2万9229棟を調べた。物の放置などによる避難経路に関する不備が3894棟、防火戸に関する不備が1455棟で見つかった。
歌舞伎町の現状と今後の課題
各地の消防機関が違反の是正指導などにあたり、総務省消防庁は22年にマニュアルを改め、特一など直通階段が一つの建物を重点的に査察し、違反の是正状況を管理するよう全国の消防本部に求めた。総務省消防庁はその後、全国的な調査や情報収集をしておらず、現在の特一の棟数や違反状況については把握できていないという。
44人が犠牲になった歌舞伎町では、今も違反が確認されている。
新宿消防署によると、25年時点で歌舞伎町と新宿3丁目で不特定多数が出入りする店舗が入る建物は695棟。そのうち、約200棟が歌舞伎町の特一という。署が695棟に立ち入り検査をしたところ、369件の違反が見つかった。19年の629件からは減ったものの、階段への物の放置や、防火戸の閉鎖を妨げる違反が目立ったという。
規制や査察は強化され、25年を経て違反件数は減少傾向にあるものの、逃げ道をふさぐ違反は今もなお確認されている。



