虐待が疑われる子どもを児童相談所(児相)が一時保護する際、裁判官が妥当性をチェックする「司法審査」が、昨年6月のスタートから10か月間で約4500件行われ、99.6%で一時保護が認められていたことが最高裁への取材でわかった。司法が関与することで親と児相の対立解消につながっている。児相の業務負担が増えており、各自治体は児相職員を増やしている。
司法審査の概要と実績
司法審査は、一時保護の判断の透明性を高める目的で導入され、改正児童福祉法で規定された。親が一時保護に同意しない場合に限り、児相は保護前、または保護から7日以内に、「一時保護状」を裁判所に請求。裁判官が審査を行い、明らかに必要がない場合を除き、認める。
虐待の疑いによる一時保護は毎年度、2万~3万件台で推移している。最高裁によると、司法審査が始まった昨年6月から今年3月までの10か月間で、全国の裁判所は児相から4546件の一時保護状の請求を受け、うち99.6%の4529件で保護状を出した。却下は3件で、残り14件は児相が請求を取り下げていた。
親と児相の対立解消への効果
親は子どもを引き離されると感情的になり、児相と対立しやすい。児相がある複数の自治体への取材では、司法審査を経ることで、一時保護直後から親が保護に理解を示すケースが出てきている。
神戸市では、3月末までに69件の保護状を請求し、全て認められた。市こども家庭センターの木邨(きむら)香代子課長(相談指導担当)は「一時保護後の家庭復帰に向け、『次はどうするか』という話し合いに進みやすくなった」と手応えを感じている。兵庫県でも、3月末までに126件の保護状が出た。県中央こども家庭センターは「親権者に対し、児相の判断の正当性を自信を持って主張できる」としている。
児相の業務負担と増員対応
児相は保護状を請求する際、保護の経緯や必要性、親子の意見などを書面で裁判所に提出する。こうした業務負担の増加に対し、各自治体は職員を増員するなどして対応している。国の統計では、児相で働く児童福祉司は2022年度の5783人から25年度は6866人に増えた。
大阪府は制度導入を見据え、裁判所への提出書類の作成や戸籍謄本の準備に専従する児相職員を24年度の6人から26年度は11人に増やした。この職員は、子どもを担当する児童福祉司と情報を共有しながら、請求の準備を行っている。府中央子ども家庭センター(寝屋川市)の林美恵子所長は「時間が限られており、担当を分けて対応している。スムーズに請求できるようになってきた」と語る。
一方で、更なる負担増が懸念されている。今年4月、離婚後の共同親権制度が始まった。一時保護する際は、子どもと一緒に暮らしていない親権者の同意も確認する必要がある。司法審査の制度設計に携わった国際医療福祉大の橋本和明教授は「児相職員の少ない小規模な自治体を中心に、更なる人員の配置が欠かせない」と指摘する。こども家庭庁虐待防止対策課は児相の状況について「継続的に実態把握を行う」としている。
司法判断への疑問の声
裁判所は保護状を出す時、理由を示さず、親は不服を申し立てることができない。司法判断に疑問を抱く親もいる。関東地方に住む夫婦は今年1月、長女(7)と次女(6)が司法審査を経て一時保護された。
夫婦の説明によると、父親が公園で、長女に石を投げようとした次女を叱っていた際、その場から離れようとした次女の服をつかんで引っ張ったところ、次女が転倒した。顔を打ち、鼻や口元をけがした。3日後、姉妹は一時保護された。夫婦は児相を通じて裁判所に、けがした際の様子が映っていた防犯カメラ映像を基に経緯をまとめた文書や、養育環境に問題はなかったとする小学校の教員の意見書などを提出した。だが、一時保護は認められた。
約1か月後、姉妹は自宅に戻り、今は家族一緒に暮らしている。父親は「裁判所から問い合わせはなく、どのように審査したのかわからない。司法が児相を追認し、チェック機能が働いていないのではないか」と語った。



